本当のエンジニアの仕事とは何か、現場コーチが教えてくれた(お客様インタビュー第4回目)

  • #開発現場コーチング

株式会社オズビジョン

## お客様インタビュー:株式会社オズビジョン 橋本様・倉澤様(後半)

2007年にポイントメディア事業からスタートした株式会社オズビジョン様。
その開発チームでエンジニア兼スクラムマスターとして、現場コーチが去った後も奮闘する橋本さんと倉澤さん。
中村が残したことが今どんな風に彼らに影響しているのか、じっくり話していただきました。
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現場コーチがいなくなってからの価値

橋本様(以下敬称略):当時は中村さんに対して一部から「言われた通りやってみたけど、あまりうまくいかなかった」みたいな意見がありました。でもそれは「自分たちで何とかしたいのにうまくやれない」という理由が根本にあったと思います。今は、中村さんが置いて行った「自分達で考えてやっていくこと」がだいぶ浸透して、チーム一人一人が考えて動いている。だれも他責な言い訳をしないようになりました。

-もしや、それは中村さんの狙い通りなんですか?

中村:そんな事はないですよ。「考えるようになってほしい」と思っていましたし、徐々にそうなっているとは思ってましたけど。

倉澤様(以下敬称略):私のチームは、2年目、3年目といった若手だけで構成された危なっかしいチームやったんですね。中村さんには、「これどうなってんの」と手厳しく面倒みて貰ってたんですが、言われたことにぐうの音も出ない。いつも「は~」ってなるんですが、その中で「なんとかして中村さんをぎゃふんと言わせよう」と「中村ウォークスルー」っていうメソッドを作ったんです(笑)。
中村さんがこれまで指摘したことを思い出したり、どういう視点でものを言うだろうか?といった視点で、自分達が作ったもんを見るようになりました。そうすると「ダサいわぁ」「アカンかぁ、なおそう」って思うところが自分達で見つけれるようになり、効果はめっちゃすごかったですね。

中村:そんなことやっていたんや(笑)。

倉澤:いや本当に悔しいって思って何とかしたかった。やってみて、今まで教えてもらったこと、言われてきたことで「あっ、これやん!」とピンとくるのがあって、確かにここは直さなアカンとか、第三者目線で改めて考えるとか、ある意味ちょっと怖い先生みたいな存在として対抗策を考えたら、すごい良い方向になったんです。すごく楽しめました(笑)。

中村:最初の頃は、「ああやってこうやったら答えにつまるだろうな」と思うわかりやすい詰将棋みたいでした。そのうち「あ、ここまで考えてるんや」って思うことが増えてきましたし「おお、すごいな」と素直に思うこともありました。
ひとつできても、原理原則への理解が浅いと応用問題をうまく対処できないこともあります。その応用問題をある程度の質量の経験を積むと対応できるようになる。この二人はそれに近くなっていて、あんまり言わなくても大丈夫だなーと最後は思っていました。
橋本さんが私に相談している時、「そうなんですね」ってうなずいていたら、突然「あーわかりました」って帰っていくことが何度かありました。私は別に何も言ってないんですよ。喋ってるうちに、自分で考えて、どういう問いで考えたらいいか分かったと思うんですよ。このことも印象に残っていますね。

橋本:中村さんが何を考えて「うん」って言ってるんだろうと考えていると整理されたり、アイデアが思いついたりしました。中村さんの顔見ながら質問すると、何も言われなくても「あ」って気づくみたいな感じです。

中村:考えて最初は上手くいかなくても「考えている」時間には学びがあると思っています。
何も考えなければ、何度も同じ穴に落ちるので、現場では考え続け、トライし続けて、結果と向き合って「次どうするか」を考える。
うまくいかなかったことも「あいつのせいや」ではなく「自分が相手に対してなにかできなかったか?」と考えるとアイデアも出てくる。「あいつが動かへんから」では、そこで話が終わってしまうよね…といった話はずっとしていました。

-チームのみんながそう考えると相乗効果で色んな事が飛躍的にアップしますよね?

中村:最初の頃に比べると一定期間のリリース数は2倍以上に増えたりしました。

コーチも現場から学ぶ

中村:課題の解決方法は人、現場それぞれで、コーチも学ぶことが多くあります。自分のグッドプラクティスに対して、思いもしなかったアイデアが出てくると「あ、それは良いな」と素直に思い、それを他の現場でも活用しています。橋本さんと倉澤さんからはそういうアイデアをいくつももらっています。
例えば倉澤さんのチームは「時間がない」という状況に対し、まずは「毎日朝10時から19時の時間割を作ってみる」と見える化しました。すると何やってるかわからない時間や目的のわからないミーティングが浮かんできました。

倉澤:すごい残業が多かったんですね。それを気持ちだけで何とかしようとしていた。新人2人のチームなので、時間がかかるなら、誰かに相談したり、やり方を変える必要があるのに、ズルズル時間を使って「なんか出来ひん、なんか残業ばっかりでしんどい」と。
19時に帰るつもりで仕事しているのに時間割を埋めていくと溢れているのが見える化されました。まず見て知らないといけない。「見える化って大事だ」って言葉としてはわかっていたんですが実感しました。

中村:自分達で時間の使い方を把握する必要があったのですが、どう実現するかはチームやその人達に合うやり方があります。また、経験が足りないから扱いきれない道具、やり方もあり「このチームはどうするかな?」と見てたら、時間割の方法がしっくり来たみたいで徐々に安定して残業時間も減って行きました。最初は22時まで時間割が書かれていたりしました(笑)。

もしも現場コーチがいなかったら?

-もし中村さんなしでそのまま続いていたらどうだったでしょう?

倉澤:クオリティの低い仕事を世に放ち続けていて、それに気づかず自分達なりに満足してたと思います。会社もけっこう和気あいあいで、日常の人間関係にも不満もなく。不満もないから、それ以上こだわらず、多分ずっと事実から目を背け続けていたと思います。

中村:「マトリックス」(The Matrix)という映画で、ブルーピルとレッドピルの話があって。ブルーピルを飲み続けると、一見ユートピアに見える世界で過ごすことができる。赤い薬であるレッドピルを飲むとその世界の本当の姿が見える。レッドピルを飲むと戻れないかもしれないと選択を迫られる。そのレッドピルを選んだのが彼ら2人だと思っています。レッドピルを飲んだことで今の状態に対して「これではダメだ。もっとうまくやりたい」と思ってくれたようです。

-視座が高くなるっていうことですか?

中村:それもひとつですし、カンファレンスや勉強会に参加するようになって、外のエンジニアがソフトウェア開発とどんな風に向き合っているのかを知って世界が広がったと思います。

倉澤:中村さんにうまいことやられたな思ってるんですが、これまでできなかったことが出来たとき「出来たやろ?楽しかったやろ?前よりすごく良くなったやろ?しんどかったかもしれんけど、こんだけのことできるようになったよね」って言われると「確かに!あ~ここまで出来たんや」って素直に嬉しい。そのまま放置していたら、何とも思わなかった、ずっと見れなかったものが見れるようになった体験が要所要所であったのが大きかったなと。人間って、見たこともないものは、欲しがることすらないので。

中村:おお、良いこと言うね(笑)。

倉澤:私たまに良いこと言うんです(笑)。
何かを変えることだったり、苦痛を伴うことならやりたくないと最初は思います。でも「こんなことが出来るようになったよ」を一回味わったら「ダラダラしてるよりこっちの方が全然面白い!」っていう感情が芽生える。中村さんの影響で、いろいろなポイントでそう感じた人が、うちの会社にはいると思います。

中村:伸びしろのある若手も多く、自信を持てばもっと進めるだろうと思っていたので、成功体験を持って欲しかった。けれど、なにより彼らが今の姿に向き合って自分達でやろうとしたのが大きいと思います。

-中村さんが、逃がさないようなタフクエスチョンを投げた?

中村:どうでしょう?(笑) 二人がスクラムマスターをやると決めた時「大変だし、音を上げるかもなぁ」と思いながら見てました。

橋本:正直、音は上げてました。でも自分がそういう性格だからか、中村さんがそういう人を選んで声をかけたのかわかりませんが「悔しい。これじゃいけない」と続けることができました。最近では、自分で考えて、結構できるようになったと思うんです。

中村:実はこの現場では言ってることほとんど変わっていないんです。「今どこにいるの?」「いつ頃どうなりたいか?」「なぜそうなりたいのか?」「今と目標の差分をどれくらいか?」「差分の理由はなにか?」ということを手を変え品を変え、ずっと伝え続けています。

-コーチの仕事って、そういうことなんですか?

中村:相手が変わりたいと思う時に後押しするのが大きな役割の1つだと思っています。今いる場所から、より良いと思う場所に行きたい。その差と差が発生している理由も見えるようにして。その差に対して何かアクションしたときに、どう変わったかわかるようにすれば、効果があったかなかったか、逆効果があったかもわかる。そうすれば、次にやることも考えることができるし決めやすくなる。それを3日とか1週間単位の短いサイクルで回す。そういうことが習慣化できれば勝手に回りだします。もちろんそうするためには色々な概念、考え方、テクニックがありますが。
「10年後にこうなりたい」も悪くはないですがすごい遠い話です。「明日こうなりたい」も近すぎるかもしれない。でも「1週間後、1ヶ月後にこうなりたい」はイメージが付きやすく、その変化もわかりやすいことが多いです。

-それは1年後とか10年後とかから逆算して、って方法ではなく?

中村:他の現場では数年後を見据えた方法でやっていることもあります。ただ当時のオズビジョンさんの場合、そもそも1ヶ月先どうなりたいか、どうあるべきかも明確でなかった。そんな状態で「10年後」と言っても絵空事でしかなくて「そんなん居酒屋で夢語ってるおっちゃんと一緒やで」とも言いました。

現場コーチで伸びるチームとは

-もしもうちの現場に現場コーチが入ったらどうかなと考えている人たちにどんなアドバイスをしますか?

倉澤:半年前と今とを比べて、やっていることにあまり差がないなら、いったん試してみると良いと思います。(コーチは)止めるのはいつでも止めれるので。関わってみることで、本来得られるはずの物を得られていなかったということに気づけます。

中村:現場コーチが効果を上げやすい現場にはいくつかの要素があると思っています。
ひとつが、変化を受け入れて、考えて動き続ける人ができれば2人以上いること。コーチとしては、その人達を見つけて、心を折らずにやれるような場を早く作り上げるのが目標の1つでもあります。
コーチがいなくなっても自分達でやり続けるためには、厳しい状況に向き合えるように促す人が必要です。しかし、そんな面倒なことは誰もやりたくないんですよ。でも「もっと良くしたい」というレッドピルを選んだ仲間同士で相談しながら進めることができればやれると思っています。そういう現場づくりのきっかけに現場コーチを試してもいいと思います。オズビジョンさんは、橋本さんと倉澤さんの2人がそうなりつつあるかなと。

-中村さん、今だから聞ける、今だから言えるような、事はありますか?

中村:先程も言いましたが、後半は自分の想像や考えを上回るアイデアややり方がでてきて、すごく現場として成長したと純粋に思います。この2人に限って言うと、3年目の20代前半でこういうことに出会ったのは今後の大きな財産になるかもしれないと思います。私はもっと後でこういうことに気づいたり出会ったりしたので。だからそのうち「オズビジョンの開発の現場すげぇ」って外から言われるようになってほしい(笑)。

橋本:オズビジョンの特性かわからないですが…早くやれって言われるとすごく疲れて動けなくなるんですが、一歩ずつ変化していくことなら出来るんですよ。変えたいって絶対みんな思っているけど、いきなり大きいことはできない。小さく、噛み砕いてやっていくならできる。これからもうまくやっていけるし、まだまだステップはあると思ってます

中村:その次のステップが見つかって行けたら、またこうやって色々聞かせて欲しいですね。

橋本・倉澤:はい!

現場コーチが入ることで、個人としても、チームとしても大きく成長を遂げたオズビジョン様の開発チーム。
次回は、企画側と開発側の橋渡しとして、中村とタッグを組んで改革に取り組んだキーパーソンにお話をうかがいます。

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