中堅受託システム開発企業での仮説検証活動(後編)

  • #価値探索

株式会社永和システムマネジメント

「仮説検証型アジャイル開発」導入事例
永和システムマネジメント様が取り組んでいた大きな課題は「魚市場のせりでの記帳作業をアプリで効率化する」こと。複雑を極めるせりの現場で使えるアプリはどのようにあるべきか。ギルドワークスはまず魚市場を訪れ、現場を観察した上で
価値探索
をすすめました。さらに繰り返しプロトタイプを持ち込んで実地検証をすすめ、アプリの方向性決定に貢献しました。

中堅受託システム開発企業にあって「自社のストックビジネスを作る」というミッションを持っている未来企画室。
まったくツテがなかった業界で、どのように新規事業のアイディアを見つけ、ギルドワークスと共に仮説検証を進めていったのか?「ギルドカンファレンス2018」にてお話しいただきました。
※前編はこちら

登壇者
羽根田 洋様(株式会社永和システムマネジメント 未来企画室室長)

プロトタイプで仮説検証

プロトタイプでの検証についてお話しします。この時には既にものができていて「実際に試したみようか」という話になったのですが、お客様に持ち込むにはまだまだ荒い状態だったので、我々の中でどうやってブラッシュアップするかを考えました。

市谷さんが提案してくれたのは、仮想現場での検証でした。段ボール箱を、市場に並んでいる発泡スチロールの箱に見立てて、その上に魚の写真を貼ったものを2列作り、仮想のセリ場に見立てました。ただ撮るだけではなく、ちゃんと使えるかを試してみました。

実はセリ中っていろんな人がどんどん話しかけてくるんですよ。「兄ちゃんこれ持って行っていい?」とか「これいくらなんか?」とか「魚いいの入ってる?」とか、それを市谷さんや上野さんが実演してくれたんです。段ボール箱を勝手に持って行こうとするんで「やめてやめて」みたいな。

これは実際のセリでも良くあることなんです。一緒に現場を見に行っているので、こんなことあるよね、というのを即興でやってくれていますが、こういうことをやられると、結構焦るんですよ。「あれ?俺どこまで撮ったっけ」って。

そんな横槍が入ったお陰で良いフィードバックが得られました。仮想現場での仮説検証1回目は「思ったより効率化されない」ということに気がつき、仮想現場と実演の検証が大事なんだ、ということがよく分かりました。

それで、市谷さんと話し合って、今の運用フローじゃダメなんじゃないか、ということになりました。アプリでやることと、運用フローを若干変えてもらうことの合わせ技で行こう、だったら、すごい効率化させられる、という話になり、実際それを仮説検証2回目でやってみたところ、めちゃめちゃ効率化されました。

使い勝手としても、タブレットやスマホで撮るとなると、縦撮りがないと撮りづらいということが分かったり、パフォーマンスとしても、写真をクラウドにアップロードしていくスピードがセリのスピードに全然追い付いていないということが分かりました。検証したビデオをエンジニアに見せて改善してもらいました。

これらを踏まえて、今は実際の現場の人にプロトタイプを使って貰い、利用者目線での検証を行っています。

利用者は若い2代目社長さんなんですが、ちょっとまごついてる。スマホの操作に慣れていないんですね。そんな人でもちゃんと操作できるか検証しています。重なっていると写真として成立しないよね、みたいなことも考えてやってくれてるんです。

こういったことを月1回ほどやっています。写真がブレたとか、フラッシュとシャッターのタイミングがずれにないようにとか、撮った写真と実物が確認しづらい、だったらサムネイルで番号振りましょう、とか。サムネイル画像も大きくして欲しいとか、そういった要望を頂き、アプリもかなりブラッシュアップされてきました。

また、プロトタイプで検証する効果がもう1つあって、それは、プロトタイプを元に別の人にユーザーヒアリングができるということです。

蓄積したデータで別のビジネスの展開


蓄積したデータを販売するようなビジネス作れないかという話ですが、当初は産地市場と中央市場の間をつなげば良いと単純に思っていました。

しかし、仕組みで割り切れなくて、結局「人と人との会話じゃないと、けんかになりますよ」みたいなことを言われて「じゃあダメなんだな~」と思いながらも色々と話をしていくうちに、産地でいつ何がどれぐらい水揚げされてるのかは基本的に電話でやりとりしているものの、電話だと全国網羅できないので「それらを細かく見られるんだったらすごく嬉しい」という話を聞けました。

後は朝獲れ情報を小売に提供して、宣伝に使ってもらったらどうか、という案も出ました。スーパーなどはチラシに「今日は〇〇の魚を特売します」と書けないんです。書いても獲れないかもしれない。魚って網を入れてみないと分からないんですよね。

なので、朝獲れ情報をお客さんに提供して「今日は鯛が安いから行こう」となれば、管理サービスとして成り立つんじゃないかと考えています。

企画はどこから来るのか


通常、我々の会社は「こういう技術を使ってみたい」というシーズから始まることが多いのですが、企画室発のものに関してはシーズがないので、ニーズから始めるようにしています。

要は「どうやって困りごとを集めるか」みたいな話なので、協業モデルも最初から織り込んでいます。我々は受託開発の会社ですが、受託開発の相談が来ても、案件になりづらい場合もあります。

例えば、実現したいことに対して予算が限られている、当社で実績のない技術領域である、などそういう特殊なお声がけを上手く横展開できそうであれば、協業企業さんと一緒に未来企画室が開発投資をしてプロダクトを作り、お客さん先に売っていく、ということができます。

協業企業さんは、アイディアはありますが、ものづくりはできない。ただし、何かしらマーケットや顧客ニーズを保有している。未来企画室は、新しいビジネスの軸を作りたくて、IT人材を保有していますが、アイディアがない。これを一緒にすることで、ソフトウェアで新規ビジネスを作れないか、ということをやっています。

先ほどのセリの例も、開発案件としては成立しづらいのですが、この仲卸さんが困っているんなら、他の仲卸さんも困ってるかもしれない、もしかすると横展開できるんじゃないの?、というので投資をしてプロダクト開発をやっています。

他にも色々な人がアイディアを紹介してくれます。例えば、旅行代理店さんからは「中国からのインバウンドに特化した販売管理サービスが良いんじゃないか」と言われています。東京だと小規模のインバウンドの旅行代理店は約500社ありますが、未だに紙とエクセルで管理をしている。「凄く困ってるので、うちが欲しいサービスを作ってくれたら多分他でも売れるよ」と。

太陽光パネル屋さんでは、太陽光パネルの下でシイタケを作っている方がいて「シイタケの栽培環境サービスをクラウドサービスとして作ったら良いんじゃないか」みたいな話とか。これは、10月中旬に現場見学に行きます。

電気工事屋さんからは、融雪設備の自動切り替えアイディアが出ています。北海道では、雪が降ると地面を温めるのですが、融雪設備のオンオフ切り替えは人間がやっています。月20万円とか、凄い費用がかかるのです。「画像認識で雪が降り始めたら自動的にオンにする仕組みができたら、売れるんじゃないか」とか。これも現場見学に行く予定です。

また、猫好きな人からは猫の体調管理サービスのアイディアが出ています。「IoTトイレが市場に出るなど、今ペット市場はアツいので作ってみたい」というような話があったりします。このように、受託開発案件以外の声を拾っていく、ということをやっています。

まとめ

言いたいことは、問題は現場で起きているので、どんどん話をしていきましょう、ということです。解決手段は簡単に実現して使ってもらう。それから、運用に耐えられるかどうか反応のフィードバックをもらう。

事業アイディアの収集に関しては、基本的に案件の声掛けをキャッチして検討、ということをやっています。これが、受託開発での仮説検証活動かなと思っています。発表は以上になります。ありがとうございました。

正解がない事業立ち上げをより確実に成長させるために
事業仮説に正解は存在せず、事業創造の段階で小さな失敗を避けることはできません。しかし「小さな失敗」からの学びを最大化し、「大きな失敗」を避けながら確実に事業開発の歩を進めるやり方が私たちギルドワークスの「仮説検証型アジャイル開発」です。

ギルドワークスでは「正しいものを正しくつくる」プロダクト開発を行っています。
お気軽にご相談下さい。

「仮説検証型アジャイル開発」のご提案 https://right.guildworks.jp


この記事をシェア

こんなことでお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。ギルドワークスのメンバーがお話をお聞きします。

  • 立ちあげたい事業があるが、本当に価値があるのかどうか自分で確信が持てない
  • 新規事業を立ち上げなければならなくなったが、潤沢な予算があるわけでもないのでどうしたらよいのかわからない
  • 企画が実現可能かどうか開発の視点を組み入れながら仮説検証したい
  • はじめてのことばかりで右も左もわからない
お問い合わせはこちらから