- #開発現場コーチング
株式会社Rise UP

前編に引き続き、日本最大級のカラーコンタクトECサイト『モアコンタクト』を運営する株式会社Rise UP様にて、菅様、孫様、上園様にお話を伺いました。(肩書き、状況などは2019年2月21日当時のものです)
##「なぜ?」とユーザー視点を大切に
ーー現場コーチを導入して、モアコンタクトのWebサイトへの向き合い方に変化は起こりましたか?
孫:以前は「何を作るか」「何をするか」にフォーカスしていたことから「なぜこれを作るのか」にフォーカスするようになったのが、一番大きな変化ですね。以前は、決められた仕様通りに開発して終わり。今は「なぜ必要か?」を最初に考えるようになりました。
上園:「何を作るか」「誰が欲しがっているか」を意識するようになりました。「ユーザーはなぜその機能を欲しがっているんだろう」とか「本当にユーザーが欲しいのはこれなんじゃないか」など、ユーザー視点での会話が増えました。
菅:従来は、運営も「ここが赤色になれば良いです」という程度の指示で「なぜ赤なのか?」を言ってはいませんでした。でも、チームならば、全員がユーザーを理解してもらわないといけない。だから「なぜ?」の部分まで細かく伝えるようになりました。そうしているうちに孫さんが言ったように「なぜ?」みたいなのを考えて言ってくれるようになったと思います。
ーー開発する上ではどんな変化がありましたか?
上園:ユーザーストーリーマッピングやカスタマージャーニーマップなどを駆使してユーザーの動きに注目して考えるようになりました。ユーザーの動きを観察する取り組みも積極的に行うようになって、ユーザーテストで仮説を立てて、その後ユーザーインタビューという流れも確立しました。
中村:ユーザーの行動をあまり意識しておらず『データ上だけのもの』みたいなイメージでしたが、そもそもカラーコンタクトを購入する人はどんな時に、どんな気持ちでWebサイトを見るのだろうか、さらにはどのように見ているのか、商品を選ぶ時はどんな風にサイトを移動しているのかなど話し合いを重ねながらカスタマージャーニーマップを作っていきました。
そして、自分たちのユーザーはこんな風に動いているはずだという仮説を立て、その仮説が正しいかどうかをインタビューで聞きにいっていましたね。
ーーユーザーテストに携わってみていかがでしたか?
菅:お客様の動きはGoogleアナリティクスで、クリックポイントは把握していましたが、実際に操作してもらった時に「ここでこんな風に迷うんだ」とか、「ここは気が付かないんだ」など、直接見ないと分からなかった点がたくさんありました。
例えば、カラーコンタクト検索時に『絞り込みボタン』があるのですが、多くのユーザーが『絞り込みボタン』に気づくことなく膨大な商品リストからひとつの商品を探し出そうとしていることを知ったり、会員登録画面で郵便番号がわからない人用に設置していた郵便番号検索ボタンが、多くの人に『自動入力ボタン』と勘違いされて押し間違えられていたり。『押し間違えやすさ』なんて現場で操作しているところを見ないと分からないもんですね。
上園:進め方も検証ベースが増えました。以前なら多数決や声が大きい人がやると言ったらやることに決まり、一度決まるとどれだけ工数をかけてでも完成させていました。今は一部のユーザーだけに導入して検証した上で本実装するかどうかを判断するという話になることも多くあります。
以前なら『実装するか、実装しないか』の二択だったのが、『実装するか、実装しないか、とりあえず小さく実装して検証するか』といった具合に、選択肢が増えたと思います。「その機能、本当に必要なの?」という不毛な議論じゃなく、「小さく試してみて、ユーザーが使ってくれるなら作ろう」という議論ができるようになりました。
中村:作ったものがユーザーに刺さっているかどうかは、誰も見ていない感じでした。開発チームは依頼されたものを引き渡したら完了、運営チームは次に何を作るかしか見ていない状況でした。
しかし今は『作ったものをどう磨くか』『作ったものを検証する』といった選択肢が増えています。このチームが素晴らしいと感じたのは、私が「第三の選択肢もあるのでは?」と伝えた時、「そんなの無駄」「これまではこうやってきた」とは言わず、素直に受け止めてくれて「とりあえずやってみよう」と考えてくれたところです。
上園:「とりあえずやってみよう」感はすごくありましたね。今までの開発だと、手戻りが本当に多かったんですが、中村さんからアドバイスももらい、認識を合わせてから作業を始める段取りに変えたところ、『思っていたのと違う』という手戻りがかなり減りました。
菅:「何が狙いなのか」をチーム全員が共通認識として持ち、「それを実現するための機能実装」という意識を全員が持っている状態って、今まではなかったんですよね。当たり前のようですが、これが大きかったと思います。
##プロジェクトが『見える化』され、Outcomeを考えるように
ーー現場コーチを導入して、製品や企画に向き合う姿勢に変化はありましたか?
上園:最初、中村さんが「グループとチームは違う」と言ってたんです。最初は全然意味がわからなくて。でも今思い返すと、最初の頃は当たり障りのない会話や相手の顔色をうかがう会話が多かったですね。やりたいこと、言いたいことを我慢している人が多かった。今はすごく関係性ができて、メンバー全員の目的は一緒だと分かっているので、激しいディスカッションもできるようになりました。そうなれたのがとても良かった。最初の頃は、菅ちゃんが言いたいことをすごく我慢していると感じていたんで……。
菅:いやいや(笑)。私、言葉を考えて話すタイプなので考えていただけだと思いますよ(笑)。皆、話し始めるまでに間があると、言いたいことを言えてないんじゃないか、って気にしてくれるんです。これまで、運営チームは目の前にある仕事だけを見て常に全力で早く走り続けるかが勝負でした。でも、スクラムで仕事をするようになって、ふりかえりがめちゃくちゃ大切だと思うようになりました。仕事に対する姿勢自体が大きく変わったと思います。今、運営チームの中でもふりかえりをやっていこうと取り組んでいます。自分の行動に対して、どんな結果や問題が生じたかを一度立ち止まって確認する時間を作ろうとしています。
孫:プロジェクト全体の見える化ができて、自分たちが今何をやっているのかもわかりやすくなりました。
上園:以前、自分たちだけでスクラムに取り組み始めた頃、見える化ができておらず、成果ばかりを求められたり、サボっているんじゃないかと疑われたりして、ステークホルダーとの関係が悪かったと思います。今は見える化されている範囲が広がり、アウトプットよりもアウトカムで評価されるようになったと思います。自分たちだけでスクラムに取り組んでいた当時よりも、確実に仕事がしやすくなりましたね。もしかしたら、優秀なスクラムマスターの孫さんがブロックしてくれているのかな(笑)
孫:私も最初はスクラムマスターがどんな役目なのか分からない状態で、とにかくやってみようと始めました。開発の阻害要因はできるだけ排除しようと考えて行動してきたつもりです。現場コーチに“スクラムマスター相談会”を開いてもらって相談に乗ってもらったこともあります。
菅:アウトプットよりもアウトカムを意識するようになったことで、『何がどうなれば成功か』とみんなで話し合いながら決められるようになりました。ずっとこの部分をひとりで考えていて、気持ち的にはすごく大変でした。しかも自分が知る範囲でしか項目を選択できないというのもヤバかった(笑)
現場コーチが入ったことで、ユーザー視点を持って開発することの意味に気がつき、プロダクトと向き合う姿勢に変化が生まれた様子。後編では、意識共有を進化させた『ダイヤ』の誕生や現場コーチ導入による変化について語っていただいています。
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