企画と現場の距離が近づき、OutputよりもOutcomeを優先する意識が根づいた(前編)

  • #開発現場コーチング

株式会社Rise UP

カラーコンタクトの卸・仕入れのほか、日本最大級のカラーコンタクトECサイト『モアコンタクト』を運営する株式会社Rise UP様。

『モアコンタクト』を開発・運営するチームは、書籍を参考にしながらアジャイル開発に取り組み始めましたがなかなかうまくいきません。そんな時、縁があって現場コーチがサポートすることに。チームの意識や考え方はどのように変化していったのでしょうか。

プロダクトオーナーの菅様、スクラムマスターの孫様、そしてエンジニアの上園様にお話をうかがいました。(肩書き、状況などは2019年2月21日当時のものです)


##本に書いてあるみたいに楽しくない!

ーー現場コーチが加入する前の状況や課題を教えてください

菅様(以下敬称略):私はサイトの運営チームをやりつつ、プロダクトオーナーをやっています。以前は運営側の要望を開発に渡して作ってもらうというウォーターフォールのような開発のやり方でした。
完成したプロダクトを見て「ちょっと違うなぁ」と思った部分を修正してもらうために、何度も手戻しをしてやり取りをしたり、思いついた要件や、やりやすそうなものから開発を始めるなど、やるべき作業の優先順位を決められていませんでした。

上園様(以下敬称略):もともと社内は「運営側」と「開発側」という感じでズバッと分かれていて、社内受託のような状況になっていました。運営側が作りたいものを開発側に依頼し、開発側はそれを作るという感じでした。
ただ、開発側の人間同士では、「もっとこうした方が良いのに」とか「こんなの誰が使うのだろう」と言いながらも、言われるがままに開発していました。主体的じゃない「受け身の開発」でしたね。

孫様(以下敬称略):以前は個人がそれぞれ別々に開発している感じでした。隣の人が何を依頼されて、何を開発しているのか詳しくは知らず、どれくらい進んでいるのか遅れているのか分からず、なんとなく「なんか大変そうだなぁ」と思ったりするぐらいでした。そんな時にアジャイル開発をチーム体制でやってみようという話になったんです。

上園:今はモアコンタクトのECサイトだけを開発していますが、当時は社内業務ツールや営業が現場で利用する業務ツールなど、開発する案件もバラバラで、開発現場は混乱していました。そんな時に中村さんと再会する機会がありました。

ーー現場コーチとの出会い

中村:上園さんがRise UPに入社する前に知り合っていて、勉強会で再会したのがきっかけでした。その時に相談に乗って欲しいというのがきっかけでした。

上園:ちょうどスクラムを始めて半年ぐらい経ち、課題感が明確になってきた時期でした。最初、「面白そうだからスクラム開発やろうよ」という話がエンジニアから出てきたので、関連書籍を読んで始めました。
でも、スクラムやアジャイルを始めたら、エンジニアは楽しくなるって書いてあるのに、全然楽しくなくて(笑)。どんどん自分たちの首を絞めているような感覚になっていきました。「本の通りちゃうやん。」と混乱していたのを覚えています。
その頃に参加した勉強会で中村さんと再開して、当時の状況を説明させてもらったのがきっかけになりましたね。

中村:何かの本を見ながらアジャイルを始めるのはよくあることです。一方で、本に書いている通りキレイに上手くいくことはあまりないです。多くが途中で頓挫したり、なぜこんなやり方をしているのかが理解できなくなる。
言ってみれば、『守破離』の『守』をせずに『破』だけつまみ食いするようなもので。上園さんから最初に聞いた内容もそんな感じでした。

ーー現場コーチに依頼して、期待する変化などはありましたか

上園:正直、最初の時点であるべき姿とか、こうなりたいという具体的なことまでは話せていなくて、ただ自分たちがこの苦しみから抜け出す糸口を見つけて、取り組みに自信を持ちたかったんです。暗中模索で、やっていることが正しいかどうかもわからないままに取り組んでいましたから。当時は、取り組みに対してフィードバックをくれるくれる人すらいませんでした。
客観的に「こうしてみてはどう?」「こうするやり方もあるよ」というアドバイスをもらいつつ、自信を持って開発に取り組みたいという想いが一番大きかったですね。

:最初「この人は何をしてくれる人なのだろう?と思ったのを覚えています。現場コーチと聞いていたので「何か教えてもらえるんだろうな」と思っていました。その予想は見事に外れるわけですが(笑)


##現場コーチが来て、最初のアドバイスが『席替え』って!?

ーーで、実際に始まってみたら、いきなり「席替えしたら?」だったと(笑)

中村:そうでしたね。社内受託のような形で運営と開発の席が離れていたんですよ。運営チームの菅さんから何かが開発チームに依頼される、みたいな感じになっていた。同じ社員なのに距離感があったんです。質問するには15m以上歩かないといけないんです。
開発チームが菅さんに質問する時、凄く他人行儀な空気感だと感じたので「席替えして席を隣同士にしたら?」と言いました。隣にいれば、独り言が聞こえて困りごとがわかったり、質問もすぐに聞けます。なにより、お金が掛からない改善なのでやってみたら、と(笑)

上園:「席替えしたら?」と言われた時、個人的には「そんな席を変えただけで何が変わるんやろ」って思いました。でも、当時「菅さん」と呼んでいたのを「菅ちゃん」ってどうやったら呼べるようになるか話し合っていたんです。皆「いやいやいや。『ちゃん』なんて恐れ多くて呼ばれへんわ」なんて話してましたから(笑)。

:「『運営側』『開発側』って呼ぶのはおかしくない?」と中村さんから言われたんです。「あぁ、確かに」と思いました。一緒に作っているのに、ラインが引かれている呼び方は確かに変だと。この指摘は凄いなぁ、と思ったのを覚えています。

:席を隣同士にして距離が近くなって『〜側』感はなくなりましたし、お互い何をしているかがわかるようになりました。

:隣同士だから相談頻度も増えたし、なにより意思決定が早くなりました。

上園:仲良くなるのに距離って大事なんだな、と、初めて知りました。話し掛けやすさが変わると、話し掛ける回数も増えるし親しさも増す。
結果、開発中にわからないことが出てきても、今までは「終わってからあとで確認しようか」と考えて、いったん自分たちで作ってしまって確認していたのが、その場で「菅ちゃんがいるから聞こうよ」となり、その場で聞いて「このまま作るかどうか」を判断できるようになりました。

:ずっとできたものに対して意見していたのが、作る前に意見を聞いてもらえるようになりました。今までは私が仕様を決めて開発してもらう感じでしたが、今は自分一人では想定できない仕様をみんなで考えて、さらに良い製品ができるようになりました。
早い段階で方向の確認や修正、多くの選択肢があって、最終的な品質は高くなりましたね。
以前は私が頭の中で描いていた製品がMAXの出来でしたが、今は私以外の人がさらにプラスの価値を付加してくれたものが出来上がる。だから絶対に以前よりも良い製品が作れていると思いますよ。

現場コーチからの『席替え』アドバイスに半信半疑のメンバーでしたが、その効果を実感して驚いた様子。中編では、現場コーチが来てから生まれた意識や考え方の変化について語っていただいています。

この記事をシェア

こんなことでお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。ギルドワークスのメンバーがお話をお聞きします。

  • 立ちあげたい事業があるが、本当に価値があるのかどうか自分で確信が持てない
  • 新規事業を立ち上げなければならなくなったが、潤沢な予算があるわけでもないのでどうしたらよいのかわからない
  • 企画が実現可能かどうか開発の視点を組み入れながら仮説検証したい
  • はじめてのことばかりで右も左もわからない
お問い合わせはこちらから