本では知り得ないアジャイルの本質に触れ、仕事への向き合い方が変わった(後編)

  • #開発現場コーチング

TIS株式会社

お客さまインタビュー:TIS株式会社 山下様

アジャイル開発未経験だったTIS株式会社の山下様のチーム。ギルドワークスの現場コーチによるサポートを受けながらアジャイルなやり方に取り組むことで、その本質を見て、感じて、学ぶことができたと言います。
(肩書き、状況などは2017年2月8日当時のものです)
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スピード感も高い意識も、すべてはお客様の価値を追求するため

中村:『すぐ電話して事件』もありましたね。
金曜にクライアントと話しをして、月曜日に私たちが話をして次の計画を立てるリズムで回っていました。そんなある日、今週の計画を話している中で「これが決まらないと進まない」ことが未確認だと分かったんです。それに対して、山下さんが「次の定例会で確認します」と。のんびりしたこと言っているなと思ったので「いやいや違うでしょ、今聞かないとこの1週間の開発どうする?」という話をして、すぐに電話でお客様に事情を話して確認してもらったことがありました。

山下様(以下敬称略):結果、その場で電話してすぐに確認できたんですが、ちょっとした意識なんですよね。

中村:確かに面倒なことなんですよ。「お客様との話って緊張するし嫌だなぁ」という意識が働くのも理解できます。「自分がお客様の立場だったら、前の定例で聞き忘れたからって、次の定例まで置いておかれるのと、電話でもすぐに聞かれるのとどっちがいい?すぐに電話で聞かれた方が嬉しいよね?」って聞きましたね。

山下:確かに!と思ってすぐ電話しました。結果、有意義な1週間を過ごすことができてよかったです。

対話と確認を通じて本質を見極め、価値を届ける

-アジャイルな開発に対する考え方や価値に対する印象は変わりましたか?

山下:本を読むだけでは分からないことを実際にサポートを受けながら知ることで、アジャイルな開発の本質に触れられたと思っています。
プラクティスはあくまで目的達成のひとつの手段に過ぎず、実際にはお客様とチームの対話を通じて本質を見極め、確かめながら価値を届ける。これを短いスパンで繰り返して価値を創造していくことだと知りました。そこに特別な方法はなく、むしろ当たり前のことを当たり前に行うことなのだと気づきました。先述の『すぐ電話して事件』もそうですが、「こういうことなんだ」と体感できたのは、ものすごく価値があったし良かったです。

-意識やスピード感に対する考え方など、本に載っていない部分が見えたということですか?

山下:そうですね。

中村:最初に山下さんと話をした時、知識を習得するのが好きでアジャイルなやり方に興味を持っているのを感じていたので、実践してもらえればハマってもらえると思っていました(笑)

山下:「毎週こういうことをやってみたら?」とアドバイスしてもらい、実際にそれをお客様のところに持って行くとすごく喜んでもらったり、何のために何をしようとしているのかがよりはっきりしたり、という体験を数多くできました。

中村:序盤は「アジャイルなやり方とは?」のそもそも論が中心で、後半はどんどん実践的になっていきました。その頃には、伝えて実践して結果をふりかえる、というリズムでやっていましたね。

山下:特に中盤以降は視座を広げるようなアドバイスをしてもらえたと感じています。

-これまでの受託開発とアジャイル開発の違いを如実に感じた部分はありましたか?

山下:受託開発では基本的にはお客様が決めたものを作ります。。そこでは、極端に言うとエンジニアとしての仕事だけ考えていれば良かった。
アジャイル開発だと、作るシステムを利用する人が見えないとどこに向かって開発するのかが見えません。だから全体のシステム設計やデザイン、マーケティングのことも考える必要がある。とにかく必要な知識の範囲が広くて、これまでよりも、エンジニアとして考えるべき分野がかなり広がります。中村さんにはUXの話をしてもらったり、マーケティングの本を紹介してもらったりしました。

中村:「こういうのを作ってください」と注文された時「どんな人が使いますか?」「どんなシーンで使いますか?」などを共通認識として関係者全員が持っていないと良いプロダクトを作ることは難しいですので。

-アジャイルな開発では、お客様とのやりとりの中でお客様の要望が見えてくるんですね。

山下:ボタンの配置がどれだけ影響があるのか、サンプルでアンケート検証するとか。やり方はたくさんあるし、こちらからどんどん提案すればいいとアドバイスをもらいました。非常に納得できましたね。

良きアジャイルは、現場の数だけあることを知った

-他のメンバーはどうでしたか?

山下:例えばボタンについてですが、私は押しやすさ、わかりやすさの視点から考えていましたが、エンジニアリングに強いメンバーはどんなコードでそれを実現するかという視点で考えていたみたいです。一人はデザイン的に、一人はコード的に……と異なる視点から見ることでプロダクトが良くなる感じがしました。

中村:より利用者に使ってもらうために自分の得意技を生かしはじめたのは、素晴らしいことだと思いますよ。

山下:チームで一緒だったあるメンバーは別のプロジェクトで、デザインの部分を担当するようになりました。昔はAPIをどう作るのかにのめり込んでいましたが、今はデザインにも目を配るようになり、大きな成長のきっかけになったと思います。

-本で読んだアジャイル開発とアジャイル開発の現場に違いはありましたか。

山下:アジャイルの教科書では、あるべき姿とそれを実現するための理想のルールや進め方が示されています。でも、アジャイル開発の現場では、あるべき姿を実現するためには現場ごとのルールの工夫や改善が絶えず必要だと知りました。
イベントをなぞってこなすのではなく、価値を届けるという目標のためなら、やり方を変えたり調整して良くて、現場の数だけやり方があることに気づきました。本には書いているのはそのあくまで一つの例。お客様の価値や求めるモノは何かを常に考えると同時に、やり方も考えるのだと気づかされました。そういったことも今思えば本にも書かれていたのでしょうが、最初はとにかく形ばかり追いかけていましたね。

中村:どうしても現場だとHowに目が行ってしまう。その裏の「なぜこれをするのか」というWhyを考えるのは大変なんですが、そこを常に意識しながらやれるかどうかがポイントかなと。

-今回のプロジェクト、お客様の反応はいかがでしたか。

山下:非常に評価が高かったです。
実は中村さんに入っていただく以前、クライアントからは結構厳しい言葉もいただいていました。でも中村さん参画後の評価では、総合的に満足という言葉をいただきました。クライアントとの最後のふりかえりでは、プロダクトとしてはもちろん進め方やコミュニケーションについても満足という言葉までいただきました。

中村:それはすごいですね。私が一番良かったと思ったことは、チームの皆さんが楽しそうにやっていたことなんですよね。アジャイルにやっていくと楽しくなってくることが多いので(笑)

山下:色々なパターンを準備してクライアントに見ていただいたりした時など作業的には大変なこともありましたが、やはりクライアントが喜んでくれるとやりがいを感じますよね。そういうのをメンバー全員が本当に楽しんでいたと思います。

現場コーチはチームや組織に新しい風を吹かせてくれる

-これから現場コーチの依頼を考えている方々にアドバイスをお願いします。

山下:見える世界が変わると思います。社内エンジニアでチームメンバーがずっと同じだったりする組織は、アジャイル開発を実際に取り組む現場でなくても、依頼することをおすすめします。社内や組織に新しい風が吹くきっかけになりますよ。
1つの現場でのエンジニア生活が長くて外の世界を知らないままだと、技術進化やトレンドの変化から取り残され、いつしか浦島太郎状態となってしまう。この気持ち、当事者ならわかってもらえると思います。

中村:「不安定な状況を安定して起こす」ことを意識したりもします。3ヶ月前に決めたルールが今も正解だとは限らないですし、そうでない割合が高いです。でも自分が当事者なら、おかしいという疑いは持ちたくないんですよね。

山下:見て見ぬ振りですね。

中村:なんとなくうまくいってるっぽいし、わざわざ波風立てるのも……と思ってしまう。その時に「これはなんでやっているのか?」とか、あえてざわつく問いをしてみたり。そうすると「今やっているこれは本当にベストなのか?」や「もっと良い方法が実験できるんじゃないか?」というところを意識するようになります。

山下:それを意識するのは社内だけでは大変だと思います。大企業の社内といった大きな組織であればあるほど、外の力を借りた方が組織の考え方を変えるという点では効果が出やすいと思いますね。

-最後に、現場コーチを受けてみて面白かったですか。

山下:ものすごく面白かったです。
『正しいものを正しくつくる』大変さの先にあるものが、ほんの少しだけ自分なりに見えたような気がしています。そういった意味では大きな充実感や充足感がありました。すでに次の案件でも、中村さんにサポートしていただいたアジャイル開発での経験やアドバイスが生きています。これからもどんどん波及効果を生み出していきたいですね。

最終的に「アジャイル開発の面白さ」を体感できたと語る山下様。プロジェクト終了後、各メンバーは別プロジェクトで今回の学びや体験を生かしているそう。皆さんの今後の活躍が楽しみです。

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