- #開発現場コーチング
TIS株式会社

お客さまインタビュー:TIS株式会社 山下様
国内大手システムインテグレーターのTIS株式会社様。受託開発比率が高い大阪本社で、お客様の要望からアジャイルな進め方で開発を行うことに。アジャイルな開発の経験がないチームをギルドワークスの現場コーチはどのようにサポートし、チームの意識はどのように変化したのか。
AIサービス事業部・AIサービス企画開発部主任の山下様にお話をうかがいました。
(肩書き、状況などは2017年10月15日当時のものです)
お客様の要望でアジャイルな開発に取り組むことに
-お二人は、同じ時期にTISで働いていたそうですね。
中村:在職期間は被っていましたが、在職中はお互い知らなかったんですよね。
山下様(以下敬称略):そうですね。直接はお会いしていませんよね。
中村:私がTISを退社した後、以前、山下さんと共通の知人の同僚らと一緒にやっていた社内勉強会の資料や社内SNSに残してきた記事を見てもらっていたようです。
ギルドワークスとして別案件でTIS様を支援している際、「大阪でもこういうチームがあって支援して欲しい」という話をいただいた。それで会った時に「社内ブログの記事を見たことがあります」と言われてびっくりしたんですよ(笑)
山下:以前から共通の知人を通じて、中村さんの伝説はうかがっていました(笑)
中村:伝説ですか(笑)
-社内では以前からアジャイルというワードは上がってきていたんですか。また、アジャイルに取り組む必要性や課題はあったのでしょうか。
山下:TIS全体としては、東京で社内プロダクトなどでアジャイルを適用したりしていたようです。
大阪本社はほぼ受託開発なので、従来の受託開発のやり方が基本。その中でも、徐々にクライアントもただモノを作って欲しいだけではなく、価値を追求したいというニーズも出てきています。特に今回のクライアントは、価値を確かめながら開発していきたいという要望をいただき、一緒にアジャイルに進めていく必要がありました。それで中村さんに依頼させていただきました。
-クライアントからアジャイルな開発をして欲しいというニーズが出た、と。
山下:そうなんです。しかし大阪支社ではアジャイルなやり方の経験者は多くなく、チームメンバーにもいなくて。アジャイルに関する本を読んだり、勉強会に参加する程度の知識と経験しか持ち合わせておらず、どうしていいかわかりませんでした。
中村:アサインされた時はどう思いましたか?
山下:面白そうだし、飛び込んでみようという気持ちでした。もともとアジャイルな開発に興味があって、勉強していましたから。
中村:受託開発メインでやっている中で「アジャイル面白そう」と思っていてくれたんですね。
山下:はい。さすがに自分がやることになるとは思っていませんしたが(笑)
-中村さんを紹介されて、じゃあすぐやろうという話になったんですか。
山下:割と早かったですね。参加してもらった時には、開発が始まった段階でした。
中村:すでに回り始めたものを観察しながら、アジャイルなやり方という視点でディスカッションし、アドバイスしていく感じでした。
受託開発のチームに現場コーチとして関わる場合、大きく2つのパターンがあります。ひとつは、現場コーチもチームと一緒になってクライアントに関わるケース。もうひとつは、後方からチームを支援するケース。今回は後者の形となりました。開発が進んでいる、TISさんとクライアントの関係が築けているという想定だったからです。
山下:あの時は、自分では、結構アジャイル開発ができていると思っていたんですよね。実は全然できていなかったのですが(笑)
中村:アジャイルなやり方に取り組もうとした時のアンチパターンのひとつとして、「なぜそれをやるのか」といったところに思いが至らず、イベントをなぞることがメインになっていることがあります。後日、山下さんに伝えたのですが、このアンチパターンにはまっていそうだなと思っていました。
山下:今思うと、最初は『アジャイルサムライ』の本も読んでいるので大丈夫です、という話をしてましたよね。本当に恥ずかしい限りです。(笑)
ガッツはあれど、経験不足で「形をなぞるアジャイル」に
-1回目の参加ではどうでしたか。
中村:チームに関わってみると、やはり形にとらわれているというか、アジャイルの表面的な部分をなぞっているだけで「なぜそれをやっているか」を理解していないと感じました。
チームは山下さん含めて4人でしたが、アジャイルなふるまい、考え方の視点からだと、チームとしてはまだ機能していませんでした。
アジャイルな開発は「ユーザーからのフィードバックを早くし、本来の価値を見つける」ことがキモの1つなのですが、チーム自身の向き合い方もクライアントへの踏み込み感も足りなかった。
-メンバーの方の意識はどうでしたか?
山下:メンバー全員、新たなチャレンジをすることに前向きな気持ちを持っていました。私も含めて仲のよいチームでしたね。
中村さんが参画するまでは、自分たちなりの解釈でやっていて、これが本当に正しいアジャイル開発なのかどうか分からないまま進んでいました。
中村:本で学んだことを実践しようという気概は大切ですし、「ガッツあるなぁ」と感心していました。
-エピソードがあると思いますが、印象的なものがあれば教えてください。
山下:まずは『デプロイ事件』ですかね(笑)
中村:アジャイルな進め方ではユーザーフィードバックを早く回すことが大前提です。そのためにデプロイやテストなどをできるだけ自働化します。
最初のふりかえりで「一番困っていることは何?」と聞いた時、ソフトウエアを届けるまでの時間が長いです、と。「どうして?」と聞いたら、全部手動でやっているとのこと。
山下:しかも1週間ごとにリリースという短いサイクルにもかかわらず手動でやっていた。
中村:手動では無理が来るよと伝えました。開発序盤だから手動でもなんとか間に合っていただけで、徐々にデプロイするものやテストするボリュームは増えていきます。手動だと、デプロイだけで1週間使ってしまいますよ……といった話もしました。
まず、アジャイルな開発ってどういう状態をいうんだろうね?という話をしました。次にデプロイやテストの流れを書き出して「なぜ手動なのか」を聞き、「自働化できる部分は自働化しよう」という話をしました。この時、メンバーから「そんなことできるんだ」「そんなことをやって良いんだ」「そういうやり方があるんだ」と声があった。どうやら「前からのやり方を踏襲する」「決められたやり方をはみ出してはいけない」という思い込みもあったようです。
山下:そうです。「まだアジャイルを分かってないな」と思われたと思います(笑)
中村:それからしばらくして自働化が進んで「すごく楽になった」「これはもっと続けていくし、もっと早くに知りたかった」と言ってくれたのはすごく嬉しかったですね。
山下:「納期の遅れなければいい、リリース作業も最後は手作業で頑張ればいい」みたいに思っていたフシがありました。
中村:リリースが早くできるほど、ユーザーフィードバックも早く得ることができ、より価値のありそうなものを作れる機会が増えるよね。プロだからそれを目指そうよというようなことを伝えました。
山下:この辺のことはガツンと来ました。
中村:社内ルールや社内環境で予定通りできないという事柄についても向き合いましたね。
山下:諦めていたのですが、改めて色々調べてみたら、いろいろ回避する方法があったんですよ(笑)
中村:たいてい裏道やちょっと変化球な手段はあるもの。でも、面倒だし、これまでと一緒でいいやとすぐに諦めてしまう。でも「お客様の喜びのために」となり、頑張って突破しようという心意気がチームの中で育っていきましたね。
山下:潜在的に合った前向きな意識が表に出てきたんだと思います。あと、お客様の指示通りのものを作るのはもちろんですが、ソースコードを良くしたりテストを自動化する作業は、こんな作業をお客様のこんなメリットのために実施します、とお客様に伝えて時間をいただいて取り組む方が、満足度も高くなることを学びました。結果だけじゃなくプロセスもお客様と共有することが大切なんだと。
現場コーチの参画により、自分たちのアジャイルは「形をなぞるアジャイル」だったことに気づいた山下様のチーム。後編では、真のアジャイルな開発を通して見えた世界や、学びを語っていただいています。
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