- #価値探索
株式会社ヴァル研究所

 
                                    
昨年創立40周年を迎えたソフトウェア開発のヴァル研究所。
1988年発売の日本初の経路検索ソフトウェア「駅すぱあと」は圧倒的な情報網羅性を特色とし、今なお進化を続けています。現在はスマートフォン向けアプリや乗換案内ポータルサイト「駅すぱあと for web」、子ども連れの母親層向け「ママすぱあと」、地域の良品を扱うECサイト「駅すぱモール」など、「駅すぱあと」ブランドを生かしたサービスを多面的に展開しています。
※「駅すぱあと」はヴァル研究所の登録商標です。
## 新規事業ミッション「パーソナライズ」を探究
いまや乗換案内サービスは欠かせない存在となりました。かつては経路検索が目的でしたが、乗車位置や出口を調べられたり、運行情報によって別ルートが提案されたり、機能はどんどん充実しています。
ヴァル研究所ではまもなく発売30周年を迎える「駅すぱあと」を使った、よりパーソナライズしたサービスを検討していました。たとえば、多忙なビジネスパーソンの移動支援に特化したサービスを提供できれば、ユーザーは効率的に仕事ができますから、時間的なゆとりが生まれます。
乗換案内は既にコモディティ化しています。しかし、移動の価値を新たに創造できれば、今までにない市場を開拓できる可能性があります。新規かつ確度の高いサービスを短期間でリリースすることを目指して、ヴァル研究所はギルドワークスに協力を要請しました。
ヴァル研究所 Business Development Dept.部長の篠原徳隆さん、UXデザイナーの伊藤英明さんよりコメント
新規事業担当者としてサービス開発に取り組んできましたが、新しいことを始めるにはかなりの時間と労力が必要で、自社単独で出来ることには限界があると感じていました。しかも、今回は『パーソナライズ』という大きなテーマを掲げたこともあり、社外パートナーの知見を必要としていました。ギルドワークスの市谷さんとは、エンジニアのコミュニティで交流があり、新規事業の立ち上げ支援に豊富な実績をお持ちだと聞いていましたので、今回のプロジェクトに携わっていただくには最適だと思いました。
実際、初期に取り組むべきこととしてご提案いただいた価値探索と仮説検証は、このプロジェクトの根幹をなすコンセプトを決めていく上で非常に役立ちました。そこで方向性を絞り込めたことが後々に生きたと思います。

価値探索&仮説検証で漠然としていたテーマを深掘り
「駅すぱあと」は乗換案内サービスとして歴史があり、路線バスまでもフォローする情報網羅性や、最新の運賃設定にきめ細かく対応する緻密さに特長があります。多くのユーザーに支持されている魅力を生かしつつ、新しい付加価値を創造したい――これがヴァル研究所からギルドワークスに寄せられた依頼でした。
その時点では「パーソナライズ」「新しい移動の価値」といったキーワードはありましたが、誰の、どのような課題を、いかにして解決するのか、といった方向性はまったく決まっていませんでした。市谷はヴァル研究所の篠原さんと伊藤さんにヒアリングしながら、壁のホワイトボードに仮説キャンバスを書いていき、現状の課題や考えるべきことなどを炙り出していきました。
さらに市谷はこの仮説キャンバスをもとに、ビジネスパーソンの移動における課題を深掘りするべく、多種多様な企業の営業パーソンをターゲットにインタビューを実施することを提案します。
この時点では営業パーソンにとって最も面倒くさいのは交通費の精算だと考えました。営業パーソンは日々あちこちを動き回り、移動時には乗換案内を使用しています。月次で交通費を精算するときには当月のカレンダーを振り返り、改めて経路を検索して運賃を調べなければなりません。しかし、移動時の経路検索の履歴を交通費精算と連動させることが出来れば、経費精算時の経路検索を省けますから、そこに価値があるのではないかと考えました。しかし、インタビューの結果、意外な課題が明らかになったのです。
「面倒な交通費精算」は、解決するべき真の課題なのか?
インタビューの結果、いくつか分かったことがありました。
仮説キャンバスを作成した時点では「少しでも時間が無駄にならないように、移動は徹底的に効率化したいから、 予定もきっちり隙間なく埋めるはずだ 」と考えましたが、実際にはそうではありませんでした。 多くの営業パーソンは時間設定にゆとりを持たせていました。時間にゆとりがあれば、電車遅延などのトラブルが発生してもお客さまを待たせることはありませんし、移動の合間にアポ取りの電話をかけたり、訪問先の資料を読み込んだり、ちょっとした仕事を行うことができます。それゆえに、計画の上で「わずかでも時間短縮をしよう」という傾向は顕著には現れませんでした。
さらに、交通費精算を”面倒くさいのが当たり前だと思っている”ことも判明しました。営業パーソンは月次の際の経路検索を”面倒だけど必要な作業”と受け止めてしまっており、何回も経路を検索するのは面倒だが、営業パーソン自身一人が我慢すればいい作業だと考えてしまっていました。
**交通費精算のめんどうさは、課題としては感じつつも、個人レベルでは解決するべき課題としてみなされていなかったのです。では、何を解決するべきなのか。何が切実な課題といえるのか。**
市谷は、インタビューを通して得た知見をもとに、3種類の仮説キャンバスとして作成しました。3種類とは「アポ取り」「移動当日」「交通費精算」という3つのシーンにおける経路検索です。それぞれに検索する目的が異なりますから、どこに切実な課題が潜んでいるか、どこから切り込んでいくべきかを見極める必要がありました。
ヒントは営業パーソンの業務プロセスにありました。営業活動はアポイントを取るところから始まります。訪問時間は前後の移動時間を考慮して設定しなければなりません。行き慣れた企業との往復ならともかく、複数の企業を回る場合や初めて行く場所があると、経路が複雑になるので、経路を調べる必要があります。経路検索は移動当日や交通費精算時だけでなく、アポ取りの段階から行っていることが分かりました。
結果、経路検索をアポ取りの段階、移動時、精算時と、繰り返し繰り返し、実施しているのです。これは営業パーソンにかぎらず、多くの人にとって無駄でしかありません。3回ある経路検索を1回に絞れないか。いやもっと言えば、 **経路検索せずに済む方法** はないのか。私達は、
・スマホアプリから予定を一度だけ登録すれば、経路検索せずに済む
・いつも使っているカレンダーで予定を登録すれば、経路検索せずに済む
いずれかのソリューションで解決できるのではないかと仮説だてました。
以上のことから、MVPは2方向のプロダクトを用意すると決めました。

## ユーザーの利便性を考えて既存サービスとの連携を模索
サービス開発において、もう一つの要素は“何を”つくるかということ。パッケージソフトやクラウドサービスなど様々な形態があるなかで、今回の仮説検証をはじめた初期段階では、スマートフォン用アプリの利用をメインに考えていました。アプリであれば、営業パーソンは出先でも情報を確認でき、更新もできますから、使い勝手が良さそうです。
ユーザーにはアプリを通して様々な情報を提供したいところですが、入力項目が増え過ぎると利便性が損なわれます。そこで、入力項目は「企業名(訪問先)」「アポイントの時間(打ち合わせの開始時刻と所要時間)」としました。企業名から住所情報を割り出し、「駅すぱあと」のデータと組み合わせれば、経路が明らかになり、移動時間を導くことが出来ます。そこから最適な移動経路を踏まえた当日のスケジュールが立てられるというわけです。
**さて、こうして、MVPの設計も行い、開発フェーズへと入っていきます。ところが、開発を経て、MVPを用いた次の検証フェーズで、私たちはさらに、想像だにしていなかった状況を目の当たりすることになるのでした。**
【開発編へ続く】
RODEM制作ストーリーいかがでしたでしょうか。現在、RODEMはトライアルの申込を受付けています。まずは試してみて下さい。私たちにフィードバックがいただけましたら嬉しく思います。
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- 立ちあげたい事業があるが、本当に価値があるのかどうか自分で確信が持てない
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- 企画が実現可能かどうか開発の視点を組み入れながら仮説検証したい
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