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日本食研ホールディングス株式会社

「ギルドカンファレンス2018」では、ギルドワークスが現場でクライアントやその問題についてどのように向きあっているのか、複数のクライアントから普段の姿を語っていただきました。
日本食研の黒木様からは、情シス部門の新規事業を進める中で遭遇したピンチの数々を、ギルドワークスとともにいかに乗り越えたかについて、お話しいただきました。
登壇者
・黒木 晋様(日本食研ホールディングス株式会社情報システム部システム企画開発第2グループグループリーダー)
・市谷 聡啓(ギルドワークス株式会社)
##シェアを広げ、働き方改革に対応するための新規事業
私が所属しているのは日本食研ホールディングス株式会社の情報システム部です。
日本食研は焼き肉のタレのCMや愛媛県今治市のKO宮殿工場が有名です。ご来場の皆さんはB2Cというイメージがあるかも知れませんが、B2Bがメインの食品会社です。取り扱っているアイテム数は約9000品目あり、調味料だけではなく加工食品の製造から販売まで一貫して行なっています。
売上高はグループ15社集めて約1072億円。従業員数4500名。もうすぐ創業47年目(2018年9月時点)ですが、右肩上がりの成長を続けており、2020年には今治市にもうひとつ宮殿工場として「シェーンブルン宮殿工場」が稼働予定です。
弊社はお得意先様と直接取引を行う直販スタイルの営業を行っています。また営業員から得られる現場の情報を全社で共有して、商品の開発や製造ラインの改善等に活かしていくというサイクルがあり好調な売り上げを維持しています。
「食品会社における情シス部門の新規事業仮説検証&開発事例」というタイトルの「新規事業」はこの営業も関係する話になります。
弊社は現在約20万軒のお客様とお付き合いがありますが、国内のシェアからすればまだ一部のお客様としか取引できていない状況です。今後マンパワーでシェアを拡大するとなると今の何倍ものスタッフと何十年という時間が必要になってしまいます。働き方改革や少子化といったこともありますから、ITの力で何とかフォローできないかという命題が情報システムに課せられました。

##要件定義から難航、大失敗
依頼を受ける側の我々情報システム部の状況はといいますと、得意先との直接のチャネル構築は未経験でした。また社内に数多くある業務システムの開発、改修依頼を受けては作っています。作るとそのシステムの面倒を見なければいけない、運用負荷がどんどん上がっていく、負荷が高いから自分の専門以外のことをやれない、得意な領域をそれぞれが職人化して担当するといった状況です。そのような日常業務に加えて、新規事業チームを立ち上げる依頼がきたという訳です。
我々は社内のシステムについては基本的にほぼほぼ内製しています。今回も内製しようと2016年12月にスタートしたんですが、結論から言うと大失敗しました。
新規事業を運用するであろう部署と一緒に開発したんですが、要件定義では「新規事業となると今の業務以外の負荷がかかってくるので業務工数を減らしたい」という意見が多くなってしまいました。ミーティングを重ねても経営者の意図するシェア拡大という本来の目的と相反して業務工数を楽にするという仕組みの方にシフトしてしまいます。
その度に本来の目的からやり直すことを繰り返しましたがなかなか前に進みませんでした。何も成果のないまま進捗を経営者へ途中報告すると当然ながら一旦プロジェクトは白紙に戻されてしまいました。
##ギルドワークスとの出会い

社内だけで大失敗しましたから、外の力を借りるしかないということでパートナーを探し始めました。東京と大阪で3ヶ月ほどかけて数社を検討した中にギルドワークスさんがいました。
ギルドワークスの市谷さんに会ったその日に、我々は「こんなことやりたいあんなことやりたい」とバーッとしゃべったのですが、市谷さんがそれを聞いてその場で仮説キャンバスを書き出しました。それで我々も頭の中が整理できましたし、ギルドワークスさんとしても我々がやりたいことが理解できたんだと思います。
その後、数社でのコンペを実施した結果、ギルドワークスさんのものが一番素晴らしい提案書になっていました。ということで、2018年の1月からギルドワークスさんとともにプロジェクトを再開しました。
##まさかのリアル・カイゼン・ジャーニー

1月から3月いっぱいまで仮説検証と要件定義を並行して進めていきました。
まず、キックオフ直後に仮説キャンバスをもう一度作り直し、仮説を立て、それをもとにお客さんの所に聞きに行く為のインタビュースクリプトを作成。そのインタビュースクリプトをもとにインタビューの1回目を行ない、仮説を再度立て直し、再度インタビューしました。
これまで我々もいろんなメーカーさんとお付き合いをしたんですが、こうやって本当にお客様のところまで声を聞きに行ってくれるのはなかなかないことで、本当に素晴らしいと思いました。我々自身も行っているんですが、そういうことをしてくれるベンダーさんは初めてで、すごく感動しています。
インタビュー結果は我々にとって衝撃的でした。
我々は「お客様はこういった機能は必要、ああいったサービスも必要」と盛り沢山のものを考えていたんですが、それらはほとんど刺さらないことがわかりました。
その結果を受けて、我々自身が機能を3割くらい削り、さらに「この機能いりますか?」「あの機能いりますか?」というギルドワークスさんの質問攻撃を受けた結果、本当に必要最小限のシンプルな仕様にまとまりました。必要最小限にしたとしても、それでもすごく大変な開発プロジェクトだったんですが。
それから確認のつもりで、開発フェーズに入る前の4月に「こういう開発をします」と 経営者の前でプレゼンしました。こちらとしては合意形成が取れているので定期の進捗報告というつもりだったのですが、そこで要件をひっくり返されました。まさにリアルな「カイゼン・ジャーニー」でした。
私と仲間は相当頭を抱えましたが、開発している必要最小限の機能はどう転んでも普遍的な機能だったので開発はそのまま継続することとしました。そして経営者が何を求めているのか?みんなで再度検討して、本当に実現できるかどうかを探るといったミッションを立ち上げました。
ギルドワークスさんが名づけてくれたんですが「オペレーション・タイガースクリーン~屏風の虎を出すまで作戦」です。ギルドワークスさんとやるとこういう楽しいプロジェクト名をつけてくれるんですね。気持がへこんでいる時にこれを見ると元気が出ます。
##アジャイル開発への取り組み、若手の変化
開発ですが、弊社の情報システム部は愛媛本社と千葉本社にあります。総勢36名の中からアジャイル開発をやりたい10名を選びました。
まだ当時は「カイゼン・ジャーニー」が発売されていなかったので「アジャイルサムライ」を読めという話をしていたんですが、その後、経営者から「カイゼン・ジャーニー」を読めという指示がありました。これにはびっくりしたんですが、我々のしらないところで市谷さんが越境して経営者に直接渡していたなんてこともありました。
開発するものについてのスキルが我々には全くなかったので、Railsチュートリアルを使って皆で勉強し始め、終了した人から実際のバックログを担当してもらって開発を進めました。
開発フェーズに入って1ヶ月ほど経った頃には、東京に集まって開発合宿を行いました。
その時に初めてモブプログラミングというのを体験させていただいて、非常に良かったので、今ではみんなで週1回定例化しています。
ただメンバーが愛媛と千葉で別れているので、モブプログラミングをリモートでやっています。最初はギルドワークスさんの方にも入っていただき複数拠点でやっていたんですが、やっぱりストレスがたまる。なんとかやっているうちに内製チームだけでできるようになったので、今は愛媛と千葉の2拠点で行っています。
困ったことなどはいつでもギルドワークスさんに相談できる形です。
モブプロをやっているところを、内製チーム以外のメンバーにも見せたら、すごく気に入って、別案件でもやろうということになっています。
朝会もやることにしました。最初はギルドワークスさんとSlackを使って始めました。現在は弊社が使っているMicrosoft Teamsを活用して同じような感じでやっています。
取組から1ヶ月経った頃にはむきなおりの合宿を行いました。前向きな意見が出るかなと思っていたんですが「時間がない」「割り込みが多くて集中できない」・・(中略)など「えーそうだったの」みたいな、ネガティブな意見ばかりが出て散々でした。時間をおいて、頭を冷やして「じゃあどうするか」と皆で話し合って「かんばんをやろう」ということに決定しました。
みんなで決めたのでやらざるを得ないですね。みんなで決めるってすごく大事です。
かんばんをやり、朝会をやり、モブプログラミングをやっていると、若手が頑張り出しました。かんばんも若手中心で自分たちが必要とするシンプルなものを考えて作りましたし、上司が一方的に話すことが多かった月1回の定例会では、若いメンバーが自発的に企画して「自分は何者か」を発表したりとすごくいい感じになってます。
あと誰かが提案して採用されると、他のメンバーも「俺も俺も」と競って提案をするようになりましたし、かんばんによって仕事が他の人から見えるようになったので「何か困っていることあるの?」とか声をかけるという気配りも見えはじめました。
かんばんでWaitというレールを作ってるんですが、仕事がなかなか前に進まず、待ちの状態が多くなると、かんばんのWaitのステージに溜まってきます。なぜ待ちかと言うと、現場の確認待ちというのが多かった。待ちがあると「じゃあ現場に行け」という話になり皆が待ちを少なくするよう現場に赴く姿勢が目立ってきました。
少しずつですが、良い風が吹き始めた感じですね。しかしまだタックマンモデルで言うと、混乱期だと思っています。
後編では第二フェーズと質疑応答についてお伝えします。
こんなことでお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。ギルドワークスのメンバーがお話をお聞きします。
- 立ちあげたい事業があるが、本当に価値があるのかどうか自分で確信が持てない
- 新規事業を立ち上げなければならなくなったが、潤沢な予算があるわけでもないのでどうしたらよいのかわからない
- 企画が実現可能かどうか開発の視点を組み入れながら仮説検証したい
- はじめてのことばかりで右も左もわからない