食品会社における情シス部門の新規事業仮説検証&開発事例(後編)

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日本食研ホールディングス株式会社

「ギルドカンファレンス2018」では、ギルドワークスが現場でクライアントやその問題についてどのように向きあっているのか、複数のクライアントから普段の姿を語っていただきました。
情シス部門の新規事業を進める中で遭遇したピンチの数々を、ギルドワークスともにいかに乗り越えたかについて、お話しいただきました。
前編はこちら

登壇者
・黒木 晋様(日本食研ホールディングス株式会社情報システム部システム企画開発第2グループグループリーダー)
・市谷 聡啓(ギルドワークス株式会社)

##新規事業の第二フェーズへ

「オペレーション・タイガースクリーン~屏風の虎を出すまで作戦」は、再度仮説を立て、インタビューと検証を繰り返し、追加機能案をまとめていきました。
まとまったコンセプト案を持って経営者のもとにプレゼンに行ったのは暑い時期でした。まさに夏の陣!という感じでした。

その結果ですが……ここでダメだったら私はここに立っていないわけで(笑)
プロジェクトも無事許可を頂き、次の作戦、第2フェーズに入ります。今度は来年2019年5月を目指して「現実 対 虚構 作戦」を立てていきます。屏風から出たのは虎じゃなくてゴジラだった(笑)

新しいフェーズに入ったんですが、課題は山積みで社内ステークホルダーとの調整が続いていきます。社内の情報はそのままでは使えない状態のものが多いので整備していく作業も大変です。新規事業の運用部門での問題もまだサービスも始まってもいないこともあり、最初は我々がやるしかないかなと思っています。

並行して情報システム部の改革も行っていきます。個々の負荷は下がらないので、今のリソースで効率的に生産性を上げる取り組みを行っていく必要があります。また、「我々はこれでやってきたから、これでいいんだ」という考えている人の意識改革も必要です。リモートモブは2拠点でやりやすくなりましたが、それでもまだストレスがあるので改善する必要があります。他にもたくさん課題はありますが、ギルドワークスさんと一緒にみんなで乗り越えていくしかないと思っています。

来年、サービスリリースが無事終わって「こんなのができました」という話をまたこの場でできればいいなと思いながら、私の話を終わります。ありがとうございました。

##質疑応答

黒木様の発表のあと、ギルドワークスの上野が、黒木様と市谷に公開インタビューをする形式で質疑応答が行われました。

ーー ありがとうございました。これからは黒木さんと弊社代表市谷でテーマを少しずつ決めてお話ができればと思います。最初のテーマは「新規事業のミッションの最大の課題は何か?」です。

黒木様(以下敬称略):新規事業のミッションは、得意先様との新しいチャンネルを作るのが第1のミッションで、その次が経験のない情シスをいかにレベルアップしていくかというミッションですね。最大の課題はお得意先から営業が吸い上げた膨大な情報をどう流し込んで行ったらいいのかといった取捨選択だと思っています。

市谷:お付き合いして感じたのは、営業さんて飲食店さんが商品を使ってくれるためにすごく色んなことをやっているんですね。試供品を提供したり、使い方や具体的なメニューを考えたり、情報提供とか。

今まで人がやっていたことをインターネットサービスで実現する時に、ただ単にネットで物が買えればいいわけではなく、営業さんがやっていたことが欠落したら売れるワケはない。そこをどうやるか。同じような部分もあるし全く同じわけにはいかない、そこを見つけていくのが今回の新規事業部の重要なところです。

ーー ギルドワークスは日本食研さん以外にもこういった新規事業は手掛けていますが、日本食研さんらしい課題、日本食研さんだからこそ苦労したことはありますか?

市谷:僕らからしたら黒木さんのチームですが、その背後にいろんなステークホルダーがいて、黒木さんがインターフェースを保っている所があった。

僕らにはそんな苦労は感じさせないんですが「そうですよね、そういう意見出てきますよね」みたいなこともあった。歴史ある組織で関係者も多く、本当に多岐にわたる調整が必要で、その辺りが僕らは知らないところですごかったんですね。

ーー 私も参加していますが週次の定例会ごとに、だいぶ苦労を乗り越えたんだなと感じる時がありますね。市谷さんに聞きたいのですが、日本食研さんに対して仮説検証やアジャイルへの理解をしていただくような時に何か困ったことかありましたか?

市谷:先ほどの黒木さんのお話を聞いて「アジャイルサムライを読んでください」と勧めたなあと思い出しました。

1つ考えたのはくどくど説明するのはやめようと思ったんですね。「アジャイル開発とは」みたいな感じでスライドベースで話をしたところで受け止めきれない。すでに15、6年ぐらい蓄積されていて関連書籍もすごい数がある。それを2ヶ月かそこらで受け止めてくださいというのは無理だから、そういうアプローチじゃなくて一緒にやるんです。

一緒にやると、活動としていっぺんに全部はできないので、これをやって次にこれをやってと段階が生まれる。それを一緒にトレースすることによって「こういった段取りでやることが現れて、それはこうやって乗り越えていけばいいんだ」というのを積み重ねていく、日本食研さんではまさにそういうアプローチでやりました。

ーー アジャイル開発を体験しながらやっていったわけですが、そういう観点から理解しやすかったとか、もしくは難しかったところはありますか?

黒木:これまでも内製でやってきて、仕様書と出来たものが変わることはよくあった。成果物を見て次どうするかと考えるという面でいえば、以前から近い開発だったのかなと思っています。ただやっぱりちゃんとはやっていないのでこういう機会に学ばせていただいてよかった。

弊社は新しいチャレンジを認めてくれるんですね。かんばんやりましたと言っていましたが、他の部署とか経営企画のメンバーが来て「これ何?」という感じでお声をいただいたり、「情シス頑張ってるよ」という声もちらほら聞こえてくるようになっていて良い流れになっています。

ーー 先ほどもチームがピンチみたいな話があったんですが、プロジェクトで最悪のピンチは?

黒木:本当のピンチはさっきのゴールデンウィーク前ですね。あれが1番大変でした。

市谷:作っていたものが違う、どうするんだ、となったのはしょうがないかなと思っています。
大小様々な期待の調整は事前にやっているんですが、規模の大きい会社を引っ張る人の発想は我々から見ると飛躍しているように感じますが、結局、目的はひとつです。

我々の武器は仮説検証なので、仮説検証の結果と、黒木さんからは日本食研さんの物を売る上での強みが何なのかを持って来て頂き、両者で新しい案を考えました。ちょっとうまく回ったなと思っても、結局は基準がなく本当にうまくいったのかわからないので心配しました。GOが出た時はFacebookに書きました。よかった、って。

ーー 黒木さんにとって、日本食研さんにとって、ギルドワークスとはどんな存在か、先ほどのスライドにあったとも思うんですが、あえてピックアップすると?

黒木:ギルドワークスさんは私にとって本当に救世主です。破綻したプロジェクトをもう1回やっていただいて、予想より良いものができて、すごく評価を頂いています。

それと、ものを作ってく上での大事なことを教えてくれました。使う人(ユーザー)の方に向かって真剣に考えないといけないということを改めて思いました。今までそこまでやっていただけるベンダーさんはいませんでした。すごくいいです。いい会社だなあと。

市谷:昨日のあるイベントで「救世主なんていないから」と言ってしまったことを思い出しまして(笑)偶然が大きいかなと思っています。初対面が去年の夏頃、ポンとお問い合わせが来たのですが、お問い合わせって全然関係性がないところから来るので、こちらも身構えるんですね。どんな期待をしているんだろうって。

初めのうちは「僕らがコミットしないところまで、とんでもない期待をしているんじゃないか」と、慎重になるんですが、最初のミーティングで、さっきご紹介いただいたように六本木に来ていただいて、話をきいて仮説キャンバスをがーって書いて、お互いに一緒にやっていけるのかどうかを見ることをとても大事にしています。

開発を始める前に検証をやるのですが、それが例えば「任せるからやっといて」「じゃあウチでやっときますわ」みたいな感じだと、なかなかいいプロダクト開発にはなっていかない。一緒に作って行くということになりにくいですよね。当事者意識をどれだけお互いに持ってやれるかが大事だと思っていて、そういう間柄になれるかなとはすごく思いました。そこが本当に上手くいったのは、黒木さんが色々気を遣ってくださったり、目をつぶっていただいたりがあったからです。

ーー これからどのようなプロジェクトに取り組んでいくんでしょうか?また、まだまだ夜も眠れない問題というのがあればお伺いしたいなと思います。

黒木:さっき申しました通り、本当にいろんな人を巻き込んで行かないと、これからちゃんとしたサービスはできない。台風の目になっていろんな人を巻き込んで、上昇気流を作っていきたい、ちょっと抽象的すぎますが、そう思っています。

夜も眠れない問題は、やっぱり、いつどんでん返しが来るか分からないところですね。弊社の経営者はすごく理解はしてくれてるいんですが、最新のものがすごく好きで、我々より先に情報を知っているんですね。そういったものが外から情報として入って「こういうの作れないか」「ああいうの作れないか」という話が降りてくる可能性も今後なきにしもあらずで、ちょっとビクビクしています。

市谷:プロダクトを作るのもそうとう大変ですが、さっき黒木さんにお話をいただいたように、プロジェクトをやりながら情シスを変えようとしている。プロダクトを作るというだけの話ではないんですね。さらにSoE領域でやって行くんだというのをきっかけにして、部署だったり、組織を変えることを実際やっていらっしゃる。

私はプロダクト開発はもちろんですが、そういう組織を変えていくということにも力を提供しています。今後どのようなプロジェクトに関わっていきたいかより、どちらがどれだけ進むかなと考えています。

ーー 会場からの質問ですが、「合意形成ができていたと思ったのに、できていなかったのはなぜでしょうか?」

黒木:後で反省しているんですが、経営者の目線で我々が話せていなかったというのが1番大きかった。経営者は目標をすでに達成した言わば山の頂上からの眺めの話しているのに、我々はそこにたどり着くまでの話を一生懸命やっている。当然ながら全く話が噛み合わないので、お怒りになったんだろうなという話です。

まずは我々が経営者と同じ最終目標をしっかり共有していること理解していただいた上で、それを実現するための施策話をしないとまずかったなという反省をしています。

ーー 時間なのでいったんこのあたりで終わります。ありがとうございました。

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