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株式会社エムティーアイ

企業・薬局・健診機関と生活者をつなぐカラダのデータ管理アプリ「CARADA」を手がけられているエムティーアイのCARADA事業部様。事業の立ち上げ後に生まれた新たな課題に対して、どう立ち向かって行ったのか?CARADA事業部の「ビジョン合宿」メンバーにお話を伺うことにしました。
■お話を伺った方
・林様(エムティーアイ CARADA事業部 事業部長)
・中山様(エムティーアイ CARADA事業部 プロダクトマネージャ)
・上杉様(エムティーアイ CARADA事業部 企画メンバー)
・川瀬(ギルドワークス)
※このインタビューは2018年2月時点の内容で、役職もその時点のものです。
## チームが忙しさの中で抱えていた課題
——どのような課題を抱えている状態だったのでしょう?
林様(以下敬称略) :新規事業を次々に立ち上げていく中で、私たちは様々な要望に応えながら事業を進めなくてはならない状態でした。それもあり、私たちのチームは意識を合わせるタイミングをなかなか取れていませんでしたね。
中山様(以下敬称略):私たちの中で「自分たちが関わっている事業だから、自分たちでもっと事業の可能性について考えたい!」という気持ちは日に日に、高まっていましたね。ただ、どうすれば「自分たちでちゃんと考えることができるか?」のプランは持ち合わせていませんでした。
川瀬:私がチームを支援していて感じたのは、想いを込めて事業に取り組んでいる方が多いにも関わらず、日々の業務に追われてしまい、その想いがなかなか表に出せていない、ということでした。
中山:そうですね、話せていないというのは大きな課題でした。事業に対して「想い」があれば、多忙な中でもみんなそれぞれいろんなことを考えているとは思うんです。だから「オフィシャルな場で、みんなで創出しあう機会を作りたい」と、川瀬さんから提案をいただいた時は、是非やってみるべきだと考えました。
林:機会もなかったけれど、なんとなく言ってはいけないような雰囲気があったのかもしれないですね。
全員:あ〜(うなずく)
林:ここにいる上杉くんもそうなんですが、話してみるとみんな「こういうのやりたい」ってちゃんと個人の中にもっているんですよ。
川瀬:そうですね。みんなで「朝まで生CARADA(カラダ)」みたいに、オフィシャルではなく個別に非公式で、今後のサービスの方向性について盛り上がりながら話しているのをお見かけしたときもありました。
中山:事業に対して熱を持っている人たちがいるのに、その想いを出し合う・重ね合う機会ということが極端になかったんですよね。でも、その熱量を総合して考えたら「いけそうだな」って、僕自身は感じるところが大きかったです。
## 「なんとなく言えない雰囲気」をどう打破したか

上杉様(以下敬称略):当時の僕は別の部署にいて外から見ている状態でした。事業部に配属されてから林さんがさっきおっしゃった「言えない雰囲気」が確かにある、そこを変えていくことができたら良いなと思いました。
川瀬:あの「言えない雰囲気」って、今思うとどこにあったんでしょうね?
林:上司もメンバーもすごく忙しそうで、何かあっても「誰にいつ言っていいかわからない」というのはあったでしょうね。全員に共有しているスケジュールを見ても話す隙間もないような。私自身も、それこそテトリスのように上(朝)から下(夜)までビッシリ詰まっていて…何か聞かれたら答えられたとは思いますが、物理的・時間的に「言えない・言い出すタイミングがない」というのは一つの要因だったでしょうね。

——なるほど、そんな状態だったんですね。では、それを打破することができたきっかけはどのようなことだったのでしょう?
林:先ほど「熱」の話が出ましたが、マッチから炎が出るように「ポポポ」と着火したタイミングがあったんです。
中山:実は小さな枠組みで「朝まで生CARADA」を地道にやっていて、ちょうど期が変わるタイミングで、個別ではなく全体でやっていきましょう、と提案させてもらったんです。
川瀬:そこが具体的なスタートラインでしたね。私自身もみなさんの熱を感じましたし、サービスに対する愛着を実感するには、みなさんご自身で事業の方向性を考え、話し合う機会が必要なんじゃないかと。それで「合宿」というスタイルを提案しました。
## 「自分ごと」にとらえてもらうための「合宿」
——「合宿」では具体的にどんなことをされたのでしょう?
川瀬:事業やサービスを「自分ごと」として捉えてもらうため、まず「私の大切な人」というテーマで、ご自身がどう歩んでいきたいのか考えてもらうワークをしました。
林:ああ、覚えていますよ。
中山:基本的に「自分ごと」にしてもらうのが、まずは大筋でしたね。ヘルスケア事業の性質から考えると、健康については人それぞれ思うこと・考えていることが違うと思うんです。当然、ビジョンに起こしていくとき、たくさんのいろんな考え方が出てくる。それでまずはみんながどう捉えているのかというのを、しっかり拾いたかったというのがあります。
川瀬:林さんも上杉さんも、人から始まる事業作りをされたい人たちなんですよね。そういう意味でも「価値観」がとても重要で、その価値観をどのように事業へ反映させていきたいのか、しっかり話し込んで事業の中に織り込んでいかないと、目指したいものにするのは難しいだろうな、と考えました。
上杉:そのために前準備として個人個人の価値を明確化しておくことが大事という話をしましたよね。
林:一人一人がちゃんと自分の価値や意見をぶつけ合って決まったものについては、その後の事業に対する貢献の度合いや意識が全く違いました。自分もちゃんと意見を出したけれど、他の意見に共感したからこれがあるという納得の上で成り立つものですから。それから経験上すごく感じることですが、普段意見を言わない人が考えていることって、実はものすごくイノベーティブだったりするんです。だから、絶対にまずは個人の意見をきちんと整理して参加した方がいいなと思っていました。
川瀬:そこは私たちがとても大事にしたポイントでしたね。世間の言葉をちょっと借りると少しネガティブって言われてしまう(普段あまりポジティブに発言しない人)って、思慮深い人だからきっと考えも深いのではないかと。
林:はい、だから臆することなく自分の意見を言える環境づくりや価値観を共有しあうという点においても、個人ワークはすごく良かったんじゃないかと思います。
川瀬:やって良かったです!
林:そのおかげで、周りの人も気付けましたからね。この人はこんな考えをもっていたんだ、ってことが。僕自身もその意見を大事にしたいと思いましたし、常に意識するようになりました。
## 非日常である「合宿」を終えて日常の中で変わったこと
——合宿を終えてここがよかった、ここが変わったということは?
上杉:今まであまり事業に対して考えを言わなかったメンバーからも、今度はチーム合宿をしたい、改善について話す機会を持ちたいという声が上がるようになりました。自分たちで未来を変えていこうという心持ちになり、実際に行動を起こせたのは大きいと思います。

川瀬:昨日(取材日前日)、まさにそのチーム合宿の振り返りをしてきましたよ。とても良い振り返りでした。
上杉:今でも続いていますよね、あの行動が。
川瀬:自発的に行動する人が出てきたことで、リーダーの方々がそういう動きを大切にするスピードが日々増していったように思います。
上杉:僕の場合だと自分のチームのリーダーが忙しさや考えていること、指示がおりてくるまでの思考回路とかを理解することができたのは大きかったです。
川瀬:組織の成功循環モデルでいうところの「関係の質」があがって、「思考の質」「行動の質」と影響を及ぼしていったんですね。
中山:及ぼしていると思いますね。
林:合宿で変わったなと感じることは、大きく2点あります。1点目は、個人ワークをしてオフィシャルな場所で意見をぶつけあったことによって、自分のチーム以外の他人のパーソナリティを知ることができたことです。お互いの価値観をちゃんと尊重しながら話す場面がかなり増えたと思いますね。そうした中から共通の言語も生まれ、コミュニケーションの質が格段に向上し、信頼関係も厚くなりました。個々の会話においても、本音と価値観、それぞれをベースにして話す場面をよく見かけるようになりました。
2点目は、自分から行動を起こしそれを表現する人が増えたことです。合宿の前、組織が変わった時、メンバー各人に「やるの?やらないの?」と意思確認をしたんです。私の信念でいうところの「Do or do not」です。やると決めたらちゃんと突き詰めていくべきだと。日々の業務の中で、突き詰めるといってもなかなか難しい状況だったとは思うんですが、合宿の後でそれを表現する人が増えてきたんです。諸々あって身動きできない感じになっていた電車が、前に、未来に向かって進み始めたぞ!という実感を得られた大きな変化でした。
川瀬:それは大きいですね。電車というとレールがちゃんと敷かれているから走っていけるのですが、ビジョンのレールってないわけですよね。遥か遠くにちょっと何かは見えるけど、どんな風にレールが敷かれるかわからない。それを「こうしたい」ときちっと声に出して言える人が出てきたのは大きいですね。これは、皆さんにとっての「大義」が生まれ育つ瞬間でした。なぜこの事業をやらなければならないか、ということを自分たちで見つけて、しっかりと肚に落ちてきている感じがすごくしました。このレールって大事だね、ってみんなで思える状態に至り始めていることは面白いことだなと感じます。

## 「合宿」とは
——つまり、合宿って一言で表現するとどんなことになるでしょう?
林:ビックリ箱、ですかね。箱の中にいろんなものが詰まっていて、開けたらビヨ〜ンと飛び出して…。この事業部でいうと、きっと箱はかなり熟した状態で、合宿によってその箱が開いたイメージです。
川瀬:林さんからみたら、これは本当に「ビックリ箱」だったんですね。
林:気づきという点では本当に「“ビックリな”箱」でしたね。愉快な人たちがいっぱいいたということもわかりましたし。いやあ、面白かったです。
上杉:僕のイメージとしては「自分脳との出会い」ですね。自分ごとにして考えるときは「全体脳」じゃなくて「自分脳」になるんですが、これでいいんだ!という新鮮な発見がありました。合宿が終わってからもメンバーと話すとき「いま自分脳じゃなかった」みたいな会話などもあって、その言葉自体が標準語のようになっています。笑
川瀬:自分脳をみんなで共有し合うことで全体脳へ進化していますよね。個人のちょっと偏りがちな考えが、全体に取り込まれることによって、良い進化を遂げる。一つのビジョンが見えた瞬間だったりするわけですが、自分脳から全体脳に変化していく過程として、面白いストーリーがいくつも見えてくるんです。私は合宿の場が、一つの予言書みたいな2日間だったと感じています。
中山:自分にとって、一つ言えるとしたら「大いなる実験」でした。どう転ぶかわからないし、どんな意見がでてくるかわからなかったですし。ただ、これによってメンバーがお互いにリスペクトしあえる状態になると、相手の発言をちゃんと聞けるようになる。その上で事業ってこうあるべき、ということを理解・認識していくには絶対に必要なプロセスだったと思います。
川瀬:この試みはやってみて、よかったのでしょうか。時間もかなり費やしましたしね。
林:間違いなく良かったでしょう!これこそがとるべき時間だったし、投資すべきリソースだったと思いますよ。
中山:合宿で熱をまとった人たちが出てきて行動することで、全体の熱量が上がった点も大きいですよね。
川瀬:相容れなかった人同士が同じ方向を向けている瞬間があるっていうのは、奇跡的なことかもしれないですね。個人の想いをみんなに共有し、受け入れてもらった上で、じゃあ事業としてはどうなのか?という観点でまた問いを立て、話し合いながら決めていく。
中山:この過程で垣間見れた世界観は、夢がある。例え、それが価値観のあわない相手から生まれたものであっても共感を得ることができる。これは、経験しないとわからない体験だと思います。
川瀬:「人」にフォーカスしたことが、よかったなあと思える大きなポイントですね。事業を進めているのはやはり「人」、「人と人」ですもんね。
中山:僕らはロボットではできないことを、やろうとしているんです。自信をもっていきたいですね!
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