- #顧客開発コーチ
株式会社エムティーアイ

## 顧客開発から始まった、個人の変化と組織の変化
前半では、ギルドワークスの顧客開発コーチと、伴走する2つのやり方を紹介しました。今回は、それによってエムティーアイのメンバーと組織にどんな変化が怒り始めたのかについて、株式会社エムティーアイの高橋様と神原様に伺いました。
## これが本当のマーケティングなんですね!
川瀬:大変なプロジェクトですが、若手の神原さんはとても活躍してくださっています。企画の仕事をされるのは今回が初めてだったのですが、仕事を見事に全うされています。
神原さんは、会社の中でも非常に期待されている方とお聞きしていましたが、実際、頭の回転は早いし、行動力はあるし、吸収力も高くて、とても優秀な方です。検証に対するスタンスも大変いいものをお持ちなので、私も日々の仕事に身が引き締まっています。
-神原さんは現場でどんなことをされているのですか?
神原様(以下敬称略):先ほどおっしゃっていましたが、それこそ薬局に実際に行くこともありますし、あとは、実際に対象の方にインタビューをしたり、そのインタビューの結果を踏まえて「こういう望みがありそうだね」「それを実際にサービスに落とすと、こういう形だね」って企画にして落として行くみたいな。地道な繰り返しですね。
-これまでインタビューなどのお仕事の経験はあったんですか?
神原:いや、全くなかったですね。
-やってみることに抵抗はありましたか?
神原:始めはありました。しかし、川瀬さんに入ってもらったことで、どこに注意して聞くのか、どういう質問をすればいいのか、一緒に入って見せて教えてくださるので、すごく勉強になりますね。
川瀬:インタビュー対象者と実際会って、気持ちが変わった部分はありましたか?
神原:確かに考え方はすごく変わってきました。今までは「必ずゴールがある」という理解でした。今は定まったゴールがなく、かつ、必ずうまくいくとも限りません。どうやって売り上げにつなげていくか、という時に、こういった不確実な部分へのアプローチもしないといけない、ということに気づきました。こういうやり方をしないと、未来がないんじゃないかな?という感覚になりました。
-その気持ちの変化のターニングポイントはどこだったんですか?
川瀬:そういえば、途中で「マーケティングの研修もみっちり受けてきたけど、会ってみないとわからないもんですね」って感想を言ってくれたことがあったよね。「今までで一番ちゃんとしたペルソナが描ける。ここまでやらないと意味ない」って言っていた記憶があります。その頃がターニングポイントかな?
神原:そうですね。インタビューを元にするとペルソナの輪郭がはっきり分かり、「こういう人は確実に存在する」という手応えがかなりあるんですよね。それまでは企画書の中だけの存在だったものが、「こういう人に向けてサービスをすれば絶対にうまくいく」という感触みたいなもの、「絶対にその辺にそういう人いる」という形が見えて自信を持って描けるようになりました。
川瀬:「これが本当のマーケティングですね!」と言ってくださってとても嬉しかったことを覚えています。
神原:そんなこと言いましたっけ?(苦笑)
川瀬:言ってました(笑)

## 試行錯誤する価値
川瀬:神原さんとは色々と思い出があるのですが、あの一言は私の中でもとても大きく刺さりました。一緒に仕事をはじめる前は「今欲しいのはヒットやホームランを一緒に打ってくれる人で、コーチ(外部支援者)じゃダメなんです」って神原くんに言われたことも思い出してます。
神原さんのおっしゃるとおり、仮説検証はゴールから緻密に逆算しても、必ず勝てる仕事ではありません。そのため、ゴール設定自体が変わること、組み立てたものが崩れることがよくおきます。当時はそんな話をするとだいぶ嫌そうな感じがありました。でも5月の中頃に「やっぱここまでやらなきゃダメです」って言っていただけて本当に嬉しかったなぁ。
神原:今も嫌ですよ(苦笑)。基本的に辛いと思います(笑) でも波はありますよね。答えが出るタイミングと出ないタイミングがあるじゃないですか。これでいけそう!というタイミングはすごくよかったって思うし、出ない時はもう答えがないから余計にどうしたらよいかわからない、どん底みたいな気分にもなるし。
川瀬:そうそう、そうだよね…。そういえば、どん底のようなピンチな時にかぎって「川瀬さんってピンチなときほど楽しそうに取り組みますよね」って言ってくれたことがあったような…。
神原:本当に仕事が好きなんだと思います。(遠い目)
高橋様(以下敬称略):答えが出ない方が楽しいよ、こういうリーンスタートアップは。
川瀬:そうなんですよね。本当に正解が見つかった時の喜びもあるので、答えが出ない時ほど面白い。むしろ、ピンチな時ほど、頑張りがいがあるというか、逃げちゃいけないというか…
高橋:僕は神原さんが今やっていることをやりたいですもん。神原さんに早く部長になってもらって、交代したい(笑)。
川瀬:最短距離でモノを作ることだけがゴールであれば、こんなに大変な過程はいらないと思うんですよ。でもお二人とも、喜んでもらえるもの作りたいという意識が本当に強いので、こういう過程をご選択頂いてる。ただそれは一人でやるのにはあまりに辛い作業なので、そこに私がご一緒させて頂いているのは意味があるのかなと思います。
高橋:本当は僕が川瀬さんから学んだたくさんのことを、神原さんや部のほかのメンバーに教えられたら一番いいんですが、今の役割上ずっと一緒に並走するのは難しいところがあって、川瀬さんに一緒に走って頂いている、見えてないところも補完して頂いているところが、非常にありがたいと思ってます。
## 新しいビジネスモデルへの挑戦
-川瀬さんに教わったことってどんなことがありますか?
高橋:エムティーアイの代表の前多は、「お客様を第一に考えよう」とずっと言っています。しかし、なかなか現場まで浸透してない状況でした。
川瀬さんと一緒に仕事させて頂いて、お客様の課題を探って、それに対してどういう価値を提供するか。それをいかに早く回して、正しいものを正しく早く届けるか。ギルドワークスさんのミッションに「正しいものを正しくつくる」というのものがありますが、それに向かうやり方とか、考え方を一番に教わったと思います。今でも考え方、やり方で迷った時は相談させて頂いてますので、非常にありがたいなと思っています。
川瀬さんから教わったメンバーがエムティーアイの中で散らばって全社に浸透させていけるとよいのですが、まだまだそうはなっていないので、我々の部署ではしっかり根付かせて、その人が違う部署に異動してもそこでしっかり根付かせられるように、というところまでやりたいと思っています。
そこまでというのは、時間もかかりますよね?
川瀬:そうですね。時間はかかります。しかし、私にとって、時間を投じてでも取り組みたい現場なんです。エムティーアイさんには、「お客様にとっての一生の友」という考え方があるんですね。課された仕事に対してモクモクと一生懸命に取り組む方が多い現場ですから、いまよりもっと良いモノづくりができる環境になった時、エムティーアイさんからさらに世の中に広がっていくだろうなという想いが自分の中にはあります。
高橋:そういう川瀬さんの想いに応えられるような変化を起こしたいですね。
ケータイビジネスの頃に比べると、スマートフォンにはより豊富なコンテンツが提供されていますから、利用率を引き上げる重要性は増しています。特に、今回のサービスは導入してくださる薬局さんから、エムティーアイさんであれば、より多くのユーザに使用してもらうことができるはずというご期待をいただいていますので、我々も利用率を引き上げる大切さに、より一層の危機感を持っています。
しかし、利用率を上げるためのノウハウが社内には不足しています。自分たちでその現状に立ち向かえなかった面があります。そこに川瀬さんに入ってもらうことで、やっとそのやり方とか、お客様をもっとよく見てみるというところに目が向かいつつあります。
川瀬:現場の若手の方はどのように捉えていらっしゃるのか、興味があります。考え方として広めていくべきなのか?取り組み全体としてどうしていくべきなのか?神原さんは、どう思われますか?
神原:会社として今までのビジネスモデルに変わるビジネスモデルを探す努力をしないといけないと思うんですよね。川瀬さんのやり方が絶対的に正しいとは思わないです。しかし、そういうものも新しくどんどんやって試していかないと先が見えないので、挑戦は絶対に必要なのかなと思います。
## 自分が使いたいと思うサービスを作りたい
高橋:お客様のニーズを探るというところを徹底的にやるような組織体制、メンバー構成というか、その知識、やり方、意識をもっとあげるべきですし、考え方も変えていかないといけないと思っています。そうしないと当社は、徐々に衰退すると思っています。
本当に重要だと思いますし、本当は僕はそういうところを発信するような役割になるべきなのですが、自分の業務に忙殺されてなかなかできないのが自分の反省点でもあります。
-川瀬さんがそのあたりをサポートしつつ。
高橋:もう、ずっとサポート頂いてます。
このチームで成果を出したいんですよ。まずはこのファーマシーサービスから始めて、それをカラダ事業部内に根付かせるのが僕の中の今年一年の目標です。それが終わったらヘルスケア事業本部全体に広げていきたいと思っています。
川瀬:エムティーアイさんは新卒採用を積極的にされているので、神原さんのような優秀な方が毎年たくさん入ってこられます。これからの人たちのためにも、広げていきたいという思いが私にもあります。
高橋:当社の今の研修制度は、マーケティングの理論をメインでやっています。確かに重要で正しいんですが、実際に生み出した企画と市場が不整合な場合は、その不整合を埋めていくのに時間かかります。僕は、マーケティングとリーンスタートアップを両輪で回していかないといけないと思っています。そうしないと当社は他社さんのスピードについていけないと思ってます。
川瀬:理論だけが先行すると、会社や自分たちにとって都合の良い企画になりがちで死角が生まれます。後戻りできないような失敗をしないためにも仮説検証をして、不整合を埋める努力が必要ですが、そのためには不都合な事実に向き合えるようなパッションをもった人材が不可欠です。
しかし、企画者の多くは「こういう人がいて、こういう風に喜んでもらえるぞ」という実感がないので、何か不都合なことが起きると自信を喪失しやすい。逆境に立ち向かえるようなパッションをもちあわせていないのです。
仮説検証のよいところは「こういう人が私たちのサービスを待ち望んでくれているんだ。」という感触が掴めて、やがて使命感に発展すること。心の中に火が灯った人ってうたれ強くって、逆境にも打ち勝っていこうとします。
仮説検証をやるといいことも多いんですよ。不整合に立ち向かう力がつくんですから(笑)
高橋:僕の目標は「自分が使いたいと思うサービスを作る」なんです。今までも、自分が使いたいサービスを目指して作ってきました。ただ実際なってない点もあります。
この薬局向けのサービスは、自分が風邪をひいたり患者になった時に使いたいと思うサービスになってほしいですし、そういうサービスをエムティーアイは目指さないといけないと思うんです。
## 成功する道を作りたい
川瀬:ところで、話は飛びますが…社内の皆さんが「常識」で線引きしていることに空気読まずに「もっとここまでやっていいんですよ」と言うのが、外部の人間である僕の仕事なんだろうなと思っています。
川瀬という個人が言っても信頼性ゼロですが、これまでリーンスタートアップの仕事をやってきて、色んな会社さんの事例を知っている、というところが多分必要な情報だと思っていて、絶えず「もっとここまでやっていいんですよ」と言いつづけることで、組織を…おこがましい言葉ですが…変えるお手伝い。組織の常識を変えていくお手伝いをしているのだなと最近実感しています。ご迷惑でないと良いのですが。
高橋:いやいや、本当に変えていかないといけないと思うんです。
川瀬:よかった(笑)そうであれば、神原さんは、根元から変えていくぞという雰囲気を非常に醸し出して、アクセルを踏み込める方なので、そこは今後もためらいなくやらせていただきます。
そういう人は増やしていかないといけない。「アクセルもうちょっと踏んでいいんじゃないですか?」とか「他の会社で面白い子こんなにいっぱいいるよ」とか、境界線を動かしていく仕事をこれからもやっていきたいと思っています。
-今後は、どういう方向性を目指していますか?
川瀬:本当に値打ちのあるプロダクトを作りたいですね。僕は仕事柄、人に興味があると思われてるんですが、プロダクトに興味がある人間。まわりまわったら人に戻ってきたという。プロダクトを作るのも使うのも人ですもんね。
高橋:川瀬さんと、神原さんも含めたこの取り組みを通じて、ファーマシーも、CARADA事業部も、ヘルスケア事業本部も変えていきたい。変えることを通じて、エムティーアイのサービスを色んなお客様に使ってもらって、喜ばれる。そういう会社にしていきたいと思っています。
神原:同じことだと思うんですが、成功する道を作りたいなって思っています。
-成功する道?
川瀬:3月に始まる時点で、このプロジェクトが何なのかという定義をしたんですよね。それが「成功する道」でした。
神原:正直、プロジェクトは手探りの状況の中ですから、若手もどうしていいかわからない人も多いんですね。それはすごい悲しい。そういう人たちが、自分の能力を最大限に活かして、希望をもって働けるような道筋を作れれば一番うれしいと思っています。
いいですね。それが成功の道ですね。
川瀬:いいでしょ~! 本当にいい現場なんですよ! 現場の中をちょっと変えるだけで見える世界は大きく変わってきます。そんなもっと「よい明日」を見ようという心をお持ちの現場ですから、絶対いい方向に向かっていくと思っています。
大きな飛躍に向けて助力するのが僕の仕事です。まだまだ、プロジェクトも続いていきますが、引き続き、よろしくおねがいします!

※本記事は2017年6月段階での情報に基いて記載しています。執筆以降に内容変更がある可能性があります。
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