人間中心設計推進機構(HCD-Net)様:閲覧者にも運営者にも優しいウェブサイトのリニューアルを支援

  • #受託開発

特定非営利活動法人人間中心設計推進機構(HCD-Net)

特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構
人間中心設計推進機構(HCD-Net)は2005年に設立された特定非営利活動法人(NPO法人)です。機器やシステム、サービスの開発に人間中心設計(HCD)/ユーザー体験デザイン(UXD)を導入定着させることで経済の活性化に寄与することを目的に、HCD/UXDに関する学習機会の提供、さまざまな研究活動、実践事例の表彰や支援、「人間中心設計専門家」認定制度を手掛けています。

## CMSの更新を機にウェブサイトをリニューアル

ウェブサイトは企業や団体にとって大切なコミュニケーションツールです。しかし、時間経過とともに発信したい情報が変化し、コンテンツの追加や削除を繰り返すうちに使い勝手が悪くなることがあります。事業活動の発展に合わせて、ウェブサイトも常に進化させる必要があるのです。

特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構(HCD-Net)がウェブサイトを開設したのは2006年のこと。それ以来、同じバージョンのCMSを使ってきましたが、セキュリティ対策のためにCMSのバージョンアップが必要になりました。また、追加情報が増えて情報構造が複雑になってきているという課題もあったため、CMSをバージョンアップした後にコンテンツの整理を検討していました。

リニューアル前のウェブサイトは、複数のスキルの異なるメンバーが更新していたため、単純なCMSのデータ移行ではなく、また機構内で作業を行うリソース確保が困難だったため、パートナー企業を公募することにしました。そして選ばれたのがギルドワークスだったのです。

HCD-Net 理事 近藤朗さんよりコメント
HCD-NetはHCD/UXDに携わる企業人や研究者からなる特定非営利活動法人(NPO法人)です。組織のなりたちから、ウェブサイトの専任者を任用するができなかったので、今回はワーキンググループを設置してリニューアルを推進しました。
パートナー企業としてギルドワークスを選んだのは担当者である佐々木さんのHCD/UXDに対する思いが強く、こちらの期待に応える提案をしてくださったからです。ビジネスライクではなく、自発的かつ積極的な姿勢も好印象でした。
プロジェクト始動後はカスタマージャーニーマップなどを活用しつつ、アジャイルに開発したことで、一つひとつ丁寧に確認しながら進められた点が良かったです。CMS更新と情報構造の整理という当初目標は達成できたので、今後は品質を確保しつつ、SNSとの連携やイベント申し込みへの対応など、徐々に内容を充実させていきたいと思っています。

## カスタマージャーニーマップで気づく、ユーザー深化の可能性
ウェブサイトの設計における重要な条件のひとつはユーザーが必要とする情報にきちんとたどり着けるようにすることです。そのためには、どのようなユーザーがどういった目的でウェブサイトを閲覧するのかを深く知る必要があります。

HCD-Netの場合、訪問者がHCD/UXDに何かしら興味・関心を寄せていることは明らかですが、もう少し詳しく見ていくと、これから学びたいのか、研究したいのか、はたまた自分の持っている知識や経験を教えたいのか、モチベーションはさまざまです。また、学びたいと言っても、興味があるからセミナーに出てみたいという人もいれば、仕事に生かすべく認定資格を取得したい人もいて、一括りにはできません。さらにHCD/UXDを活用する場がビジネスなのか、アカデミアなのかによっても変わってきます。

多様なニーズを掘り下げ、ユーザーのサイト内での行動を整理するために、ギルドワークスはカスタマージャーニーマップを提案しました。

カスタマージャーニーマップとは、ウェブサイトやサービスを利用する顧客がどのようなプロセスで、どのようなタッチポイントをもって、どのような感情と思考をもって、どのような体験をするのかを一枚絵のように視覚化する手法です。マップ作成のプロセスを通して、ユーザー分析が進むことが期待されます。

実際、カスタマージャーニーマップを作ったことで発見がありました。

初めは軽い気持ちでウェブサイトにアクセスしたけれど、学びを深めるほどに興味がわいて知りたいことが増えていき、やがて受動的な学びから能動的な研究へと発展し、さらには論文を書きたい、資格を取得して実践したいと思う……そんな学びを深めるプロセスが見出されました。HCD-Netの近藤氏は「ユーザーの行動がループするマップはよく見ますが、ユーザーの興味・関心が深まっていくマップというのは珍しい」と感じたそうです。

カスタマージャーニーマップのほかにも仮説キャンバスなどを用いて、プロジェクトのメンバー全員で目線を合わせながら、HCD-Netにとって最適なウェブサイトとは何か議論を進めました。それをもとに、掲載したいコンテンツのリストを作成し、情報の整理を進めていきました。

一方で、技術的な調査や開発に向けた準備も進めました。今回は新しいCMSに切り替える際に既存コンテンツの移管作業が発生します。サーバなどの環境も指定があるため、事前にシステムの技術的な調査は必須でした。

## 事前のヒアリングをもとに国産CMSを提案
幸いにも事前調査で大きなトラブルはなく、いよいよ開発が始まりました。

HCD-Netのウェブサイトは機構の事務局およびボランティアの関係者で運営しています。リニューアル後も同様の体制であるため、記事更新が行いやすいことはCMSを選択するうえで重要な条件のひとつでした。また、今回のような大掛かりなリニューアルは頻繁に行えないことから、機能拡張しやすいシステムが良いとも考えていました。

事前のヒアリングから、これらニーズを得ていたギルドワークスの佐々木は、新しいCMSとして「a-blog cms」を提案します。これは名古屋市に拠点を置くアップルップルが自社開発したもの。日本のウェブサイト構築のノウハウのある会社が開発しているため、大きくカスタマイズしなくても思い通りのデザインが可能であり、長年利用されていることから、CMSに不慣れな人でも更新作業が行いやすいことが特徴です。

プロジェクトはクライアントであるHCD-Netと、CMSベンダーであるアップルップルの間を、ギルドワークスがつなぐ体制で推進されました。クライアントはコンテンツの制作に注力するため、CMSベンダーから複数の技術的な選択肢が提示されたときに絞り込めないことが往々にしてあります。その結果、必然性のない機能や情報が残り、ユーザービリティが低下すれば本末転倒です。そうならないよう、ギルドワークスが両者の間に入って、あるべき姿を実現するための橋渡し役を担うというわけです。

実際の開発はアジャイルで進めました。関係者は週1回の定例会議で開発の進捗を確認し、不明点や決断が必要な課題があれば、その都度、HCD-Netの近藤氏に相談。小さな課題も記録・確認し抜け漏れがないよう、開発を推進しました。

さらに、ギルドワークスでは開発に携わるメンバーが毎朝、前日までの作業内容と困っていることをチャットツールで報告し合うようにしました。たとえば、一部作業が遅れて困っているとします。なぜ遅延が発生したのか原因を探ると、実は次の工程のビジュアルデザインが決まっていないために着手できないプロセスがあることが分かりました。そこでギルドワークスはクライアントであるHCD-Netに現況を報告。当該デザインがスムーズに決定するように支援します。

一般に、開発者は課題を自分で解決しようと抱えがちですが、その結果、小さかったはずの課題が大きな問題に発展することがあります。そうならないためには困ったことを気軽に言える環境を作る必要があります。課題が小さいうちは解決方法もシンプルですし、何よりメンバー全員で課題を共有し、解決にあたる姿勢はチームビルディングにも有効です。ギルドワークスではこの手法をよく用いています。

## 実際のデータを使ったからこそ分かった課題にも迅速に対応
今回のリニューアルプロジェクトが始まったのは2016年1月のこと。それから関係者間で綿密な打ち合わせを行い、3月にはカスタマージャーニーマップなどを作成して議論を深めました。ここまでの議論をもとに「学ぶ」「研究する」「実践する」「認定制度」「組織概要」という、ウェブサイトの土台となるフレームが決まりました。

ざっくりと全体像が見えてところで、HCD-Netのワーキンググループのメンバー5人も加わり、ウォークスルー評価を実施。課題出しをするとともに、機能のプライオリティを決定し、細かな部分を一つひとつ詰めていきました。

そこからアジャイルに開発し、5月半ばにはHCD-Netメンバーがテスト環境で確認しできる段階まで進みました。6月にはこれまでのデータを順次移管していったのですが、いくつか想定外の作業も発生しました。ダミーテキストを用いたデモ画面では気がつかなかったのですが、実データが表示されて初めて認識された矛盾や課題があったのです。
たとえば、イベントやセミナーの開催告知コーナーでは個々の企画をカテゴリー分類するのですが、なかにはイベントともセミナーとも判断しにくいものがありました。

ギルドワークスではアジャイルかつオープンに開発を推進するので、何かあればすぐにクライアントやベンダーと連携して課題解決に当たれます。それゆえに個々の課題を解決する大変さはあっても、プロジェクト全体を振り出しに戻すような大問題は構造的に起こりにくく、今回もほぼ予定通りに進行しました。

リニューアル版のウェブサイトは無事、6月20日に公開されました。

新しいCMSは順調に動いていますが、リニューアルの目的はデータ移管や情報構造の整理ではありません。HCD-Netとユーザーが適切にコミュニケーションを交わし、長期的な関係性を構築することこそが本来目的ですから、HCD-Netのウェブサイトはこれからも進化を続けていくことでしょう。

## プロジェクトを担当して

佐々木 将之担当:佐々木 将之

HCD-Netの活動には以前から関心を寄せていました。旧ウェブサイトの分かりにくさはユーザーとして体感していましたので、リニューアルプロジェクトに携われたことは大変有り難く、やりがいも感じました。
今回特に意識したのはウェブサイトを閲覧するユーザーにとっても、運用するメンバーにとっても、使いやすい仕様に仕上げることです。カスタマージャーニーマップなどの手法を駆使してユーザーを分析し、情報構造の整理に尽力しました。
新しいCMSへの移管は無事完了しましたが、重要なのはむしろここからです。アクセス数はどう変化したか、入会希望者は増えているか、資格制度への問い合わせはどうかなど、HCD-Netの事業活動の観点から新しいウェブサイトを評価しなければなりません。ユーザーとのより良いコミュニケーションのために、引き続きプロジェクトを支援させていただきたいと思っています。

本文中に記載の内容は掲載時点のものであり、閲覧時に変更されている場合があります。

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