事業アイデア応募でよくある10個のアンチパターン

はじめに


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現在 MVPアワード を開催中です。毎年50以上の応募をいただき、ほぼすべての事業アイデア・事業解説に目を通している中で、いくつかアンチパターンとなってしまっているものがあります。
この記事では、そんなアンチパターンのうち、よく見るものを紹介します。

参考にすると良い記事や書籍


今回の応募者の皆さんには仮説キャンバスの記載をお勧めしています。仮説キャンバスの基本的な記載方法については、 シン・ゴジラの仮説を仮説キャンバスで立てる をご覧ください。
アイデアを磨いていく際の心構えは、千葉工大の安藤昌也教授の 安藤研鬼の十則 が参考になるかと思います。
馬田さんが書いた 逆説のスタートアップ思考 も非常に参考になります。
黒田さんの LEAN STARTUPアンチパターン と少し被っているところがあります。(こちらのスライドは、アイデア応募のその後にぶち当たる課題の記載も多いです。

アンチパターン10個

1.課題と提供価値、課題とソリューションがトートロジーになっている


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提供価値が課題の裏返し、あるいは、ソリューションが課題の単なる裏返しであるケースです。
これは何かを言っているようで何も言っていない、いわゆる トートロジー にあたります。

例)
課題:◯◯の申請に手間がかかる → 提供価値:申請に手間がかからない
課題:◯◯の申請に手間がかかる → ソリューション:申請が簡単にできる

この場合は、「なぜ手間がかかるのか?」など 課題を深掘りする 、その課題は当たり前品質と割り切って 別の課題を対象とする 、などが有効です。

2. 検索するとすぐ競合サービスがみつかる


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そのアイデアの分野に詳しくない状態であっても、キーワードを検索しただけで競合が見つかるケースがあります。競合が居ても構いませんが、その場合は競合に対する優位性がないとアイデアは成り立ちません。

例) 料理のレシピが探せるサイト→ https://cookpad.com/
この場合は、そのアイデアをピボットして 別アイデアにする か、競合サービスに対する 優位性を担保する などが有効そうです。

3.良さそうなのに競合が誰もいない


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「2. 検索するとすぐ競合サービスがみつかる」の反対かもしれませんが、自分では画期的だと思われるアイデアに対して 競合が全くいない 、というのもまたリスクがあります。
もう少し言うと、競合がいないことがリスクなのではなく、競合がいないと錯覚してしまう(リサーチ不足)、何らかの理由でその市場は危ういために既に撤退が相次いでいる(市場がない)などが隠れている可能性があります。
仮に競合がいない場合は、「なぜ競合がいないのか」に対して納得がいく理由が説明できることが重要です。

4.「画期的なUI」がソリューションまたは提供価値


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ソリューションや提供価値に、自分が考えた画期的なUIや操作が簡単になることを挙げる方がいます。しかし、必要なリソースを押さえていない限り、UIが真似をされたり、より操作が簡単なUIが他社から提供されれば、それは価値を失ってしまいます。そのため、実際は 「画期的なUI」はソリューションでもなく、提供価値でもない 場合が多いです。また、最近はiOSやAndroidなどのアプリでも、インターフェースガイドラインを大きく逸脱するようなUIは好まれなくなってきている傾向もあります。その場合はむしろ「画期的なUI」がユーザーが利用する阻害要因となるかもしれません。

5. 「(流行のキーワード)」がソリューションまたは提供価値


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(流行のキーワード)には機械学習、IoT、ブロックチェーン、VRなどが入ります。こういったキーワードは、最近出たものが多いですが、その言葉の裏には膨大な知見を持っている企業や個人が存在します。少なくとも、初心者がうまくアドオンしてビジネス的に価値を出せる、というものではないと考えます。これらをソリューションや提供価値にするためには相当量の知見の下積みが必要であり、下積みがない限りは、これらを仮説キャンバスに記載するようなアイデアに取り組むことはリスクが多いと考えます。

6.届ける相手≒顧客のことが分かってない


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仮説キャンバスにはその顧客がおかれた状況や、その顧客の傾向を記載してもらっています。
例えば、どんな雑誌を読みそう(あるいは読まない)でしょうか。インターネットで買い物はよくしそうですか。インターネットはPCで利用しますか、それともスマホで利用しますか。スマホでよく触るアプリは何でしょうか。
こういった顧客のことがわかって居ない限りそのサービスを広めることはできませんし、そもそも課題設定に誤りがあったりしないでしょうか。

7.課題を切実に抱える人が見つかっていない


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「6.届ける相手≒顧客のことが分かってない」の亜種ですが、挙げた課題(顕在課題/潜在課題)を切実に解決したいと思う人に出会えていないケースがあります。
そのサービスにお金を払ってもいいという人に出会えていないのは、リスクがかなり大きいです。プロトタイプやモックアップを見せて「お金払ってでもいいから使いたい」、むしろ「いつそのサービスできるんですか」という人が居てこそ、価値あるサービスと言えるのではないでしょうか。

8.マッチングと言いつつ、片方側のメリットしか考えていない


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アイデアで「マッチングする」というサービスのアイデアが増えています。ただし、(仮説キャンバス上で表現しにくいのも影響しているかもしれませんが)片方のメリットしか考えていないケースが散見されます。
よくリクルートさんで引き合いに出される リボンモデル (サービスに対してカスタマーとクライアントの双方をつなげるビジネス)は、双方のメリットを追求しているからこそできるビジネスです。
それをごく初期の段階で片方のみの利益を追求した場合、供給過多、あるいは、需要過多になることは容易に想像がつきます。

9.他ならぬ自身が取り組む「目的」がない


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アイデアを応募した人が当事者やその周辺の人でもなく、「他ならぬその人が取り組む目的(理由)」がないケースがあります。
これは、「6.届ける相手≒顧客のことが分かってない」や「7.課題を切実に抱える人が見つかっていない」に陥りやすいということもあります。何より失敗の確率が高い、不確実な新規事業を考えるに当たり、うまくいかないことが出てきた時に、支えになるのは「他ならぬ自身が取り組む目的(理由)」です。それがないという時点で、先に進めなくなってしまうことが多くあります。

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