ふりかえりでファン・ダン・ラーンをやってみた

ギルドワークスで 現場コーチ としていろいろな現場が変わっていくことや改善を支援している中村 洋です。

先日「 ファン・ダン・ラーン((Fun・Done・Learn:FDL)ふりかえりボード 」を教えてもらいました。

このファン・ダン・ラーンは書籍「 アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き 」で紹介されているふりかえりの5つの構成のうち「データを収集する」フェーズで特に使えそうだと感じています。

このエントリとはファン・ダン・ラーンをいくつかのチームでやってみての感想などを書いていこうと思います。

「楽しい」という声が多い

「やっていて楽しい、ポジティブな気持ちになれる」という声を多く聞きます。
ふりかえり=課題の改善という意識がすりこまれているのか、”よくなかったこと”にフォーカスして話しがちな傾向があるのを見聞きします。よくなかったことにフォーカスすると気持ちとしては少し後ろ向きになります。
それに比べファン・ダン・ラーンの切り口は学びや楽しさといったポジティブな気持ちを持ちやすいものになっているように感じます。

余談。
ふりかえりでよく使われているKPTですが、ProblemをなくすためのTryを一生懸命出そうとしているチームもあります。もちろんProblemの解消も大事なのですが、同じくらい良い習慣であるKeepを強化するTry、新しいことにチャレンジするTryも同じくらい大事です。

「ちょっとした発見」もLearn

あるチームではLearnが極端に少ない傾向にありました。どうも「Learn(学び)」をすごい発見のことのように捉えてしまったようです。そのため、ちょっとした発見を書いていないような感じでした。

1週間も仕事をすれば使っているツールの新しいショートカットやコマンドのオプションを知ったり、フレームワークのメソッドの使い所を知ったり、あるあるな落とし穴に落ちたなど、 1週間は知らなかったけど、今は知っていること を1、2つあるものです。

意外と自分だけしか知らなかったというのは少ないものです。自分より経験のある仲間も知らなかったことを自分が知ったこともあります。なので「こんなことで恥ずかしい」などと思わないでどんどんLearnを伝えていけば良いと思います。
そのLearnを見て「それならこういうことも知っているといいよ」と仲間が新たな知識を提供してくれるかもしれません。

「◯◯をしてうまくいかなかった」もLearn

「リリース直前に慌てて修正してバグを出してしまった」というネガティブなできごとはどうすればいいのか?と考え込んでいるチームもありました。そのチームはそういう付箋はDoneでもLearnでももちろんFunでもない欄外に貼られていました。

同じような状況で別のチームは「リリース直前に修正すると確認がおろそかになってバグを出しやすいことが ”わかった” 」とLearnに貼ってもいました。
起きたことの良し悪しではなく、発見したことはなにか?にフォーカスして話しやすいのもファン・ダン・ラーンの特徴と感じました。

「こういう状況においてこういうことをするとうまくいかない」ことがわかれば、自分達だけでなく、他のチームにとっての貴重な情報になります。まさにハンガーフライト(※)のようです。

飛行機乗りの世界では、ハンガーフライトという言葉があるそうだ。天候が悪ければ、良くなるまで、ハンガー(格納庫)で待つ。その間、同じように天候の回復を待つ他のパイロットと雑談をする。この雑談が、飛行に関する貴重な情報源となっていたらしいい。というのは、一人の人間が経験できることは限られているからだ。お互いの体験談を話すことによって、それぞれの経験を共有することができる。

コミュニティや職場で、ハンガーフライトしよう。 – papandaDiary – Be just and fear not.

自分達にとって何が起きたらFunなのか?

ある時、2人のメンバーが同じタスクを付箋に書いて、AさんはDoneとLearnに、BさんはDoneとLearn、Funの境目に貼りました。
体験した同じ出来事に対して、感じ方が違うことが表出した瞬間でした。どちらが正解でもなくどちらも正解だと思います。

この出来事をきっかけに「それぞれどんなことをFunと思うのか?」「チームにとって何が起きたらFunなんだろう?」という会話をするようになりました。
こういう会話を重ね、相互理解をしていくことで関係性が深まりますし、チームとしての価値観ができることはチームの意思決定が素早くできることにもつながります。

まとめ

ファン・ダン・ラーンを使って「データを収集する」フェーズで質の高い会話ができると、その後の「アイデアを出す」フェーズもその流れで良いアイデアが出ることが多いように感じます。

これは ギルドワークスのアドベントカレンダー2018 の22日目の記事です。

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