正しいものを探す実践者の対話セッション :「正しいものを正しくつくる」とは何か。カンファレンス レポート①

#イベント

**「正しいものを正しくつくろう」と挑戦している企業の方をお招きして、2017年8月29日に開催したカンファレンス。
その事例を発表してくださった皆様に、さらに対話セッションにもご登場いただきました。
質疑応答を通して事例について深掘りし、さらにギルドワークスとの関係性も暴露(?)した、セッションの様子をお伝えします。**

### 登壇者
株式会社エウレカ・梶原 成親様ギルドワークス・中村 洋
Pollet株式会社・鈴木 良様ギルドワークス・市谷 聡啓
株式会社エムティーアイ・高橋 知朗様ギルドワークス・川瀬 浩也

(以下敬称略)

## スタートラインが違えばアプローチも違う

市谷:今度は共通のテーマに対して、皆さんの中でどんな違いがあるのか、見ていきたいと思います。会場の皆様からも改めて聞いてみたいことがあれば、ぜひお気軽にご質問ください。
では、最初は答えやすい質問からはじめましょうか。まずお話いただいた皆さんの間で、他の方の話を聞いて、もっと深く聞いてみたいということはありませんか?

鈴木:梶原さんに質問です。現場コーチが入って最初に、アジャイルやスクラムの「お作法」をしっかり守るように働きかけてこられるじゃないですか? 弊社の場合は、そういった働きかけを受けて、合わない社員が退職してしまいましたが、御社ではそういったことはなかったんですか?

梶原:結論から言うと、なかったですね。それはたぶんコーチを導入した経緯の違いがあるのかなと思います。オズビジョンさんは社長が選んできて、現場が従うみたいな入り方かなと思うんですが、僕らはどちらかと言うと現場から「変えたい」と戦略付けたので、合わない社員はいなかったかな、と。
あと(中村)洋さんが、どうもエウレカでは大人しいんじゃないかという仮説があって、それは仮説検証をしてみたいと思っております(笑)

中村:オズビジョンさんに行ったときと比べると、だいぶマイルドというかソフトに入ってますね。オズビジョンさんの時は組織全体が「もうやらんとあかん」という感じもあって、割と最初は「とにかく早く見える化せえ!」とみたいなことを強めに言ってましたね。

梶原:エウレカでは(中村のマネで)「見える化せんと、あかんのんちゃうかな~」ていう優しい感じですよね(笑)

中村:オズビジョンさんでは「せんかったら(プロダクトオーナーのレビューがある)来週金曜日ぶっ飛ばされるけどいい?」という感じでした。

鈴木:スタートラインが違ったんですか?

中村:そうですね。「まず守破離の守をしたい、しなきゃ困る」という状況と「うまくいかないからサポートして欲しい」というのと、その差があったと思います。

![](/wp-content/uploads/2025_05/gwsite-content/news/2017/drr-conference/photo/P1170113.JPG)

## ギルドワークスが入ってよかったこと

高橋:お二人にお聞きしたいんですが、エムティーアイは川瀬さんに企画の仮説検証で入っていただいているんですが、開発部分はお願いできていないんですね。そこで「ギルドワークスさんにお願いして、ここがやっぱりすごいなー」というところをぜひ教えていただきたい。質問は、ギルドワークスさんの開発はどこが良いですか? です。

鈴木:うちは事業が2種類あるんですが、ギルドワークスさんの開発って本当にケースバイケースです。コーチの中村さん、開発の市谷さん、お2人の共通点として、こちらに対してクライアントという位置づけではなくて「嫌なものは嫌」「受けないものは受けない」みたいな、対等な関係なんですよ。それが社員にも「この人は社長がオーダーしたから言うこと聞く、という人じゃない、フラットな関係の人だ」と受け止められ、社員からも信頼されるのでそういうところがいいな、と。

梶原:開発はお願いしたことはなくてコーチだけなんですが、「もし僕がこれを言ったら、感情的な対立になりそうだな」という時に(中村)洋さんがかわりに言ってくれるのが僕としてはすごく楽ですね。「他の現場であったことなんやけどね」みたいな枕詞があって、その後で第三者的意見として、僕が言って欲しいことをズバッと伝えてくれる、という三角関係ができるから感情的な対立にならない、なりづらいというところが良いと思いました。

![](/wp-content/uploads/2025_05/gwsite-content/news/2017/drr-conference/photo/P1170121.JPG)

## 「正しいものを正しく作る」を知って、それぞれのビフォーアフター

市谷:では次に。ギルドワークスと関わって、もしくは「正しいものを正しく作る」を知って、それぞれの中でどのような変化があったのか、ビフォーアフターを教えていただけますか。

梶原:僕はもともと開発側、プロダクトオーナー側だったので「プロダクトバックログを爆速で解決していくことが必要だ」という考えがあったんですね。それが「プロダクトバックログをどう仮説検証して本当にお客さんが使うものを早く作るか」という目線に変わった。ひとつ視座が上がったというのが僕自身の大きな変化だと思っています。

鈴木:…いきなりバックログにやるべきものとしてチケットを切っちゃいけない。まずアイスボックスにおいてから、チームと話していつやるかを決める。勝手なことをやっていると、本当に怒られるんだ、ということを知りました。

市谷:3年も一緒にやってそれだけですか? なんか寂しいですね…もっと深いい話がいっぱいあったような気がしますけれども?(会場:笑)

鈴木:(笑いながら少し考えて) 以前はエンジニアへの苦手意識が僕にありました。会社はITなんですが、僕は営業とか企画出身なんで、エンジニアのことは全くわからない。やって欲しいことはいろいろあるけれども、エンジニアに拗ねられたら進まないし、エンジニア採用ってすぐにはできないので、なかなか言えない。でも彼らがちゃんとやってくれないとまずい。困っていた時にギルドさんが入ってきてくれて、エンジニアの話が僕にも少し分かるようになった。彼らはこういう思考だから、コロッと変えちゃうと困っちゃう時がある…。そういう話を何回もして、急に変えると何が起こるかがある程度わかった。先ほどは軽く言いましたが、エンジニアの思考を理解することができて、どういう時に何をするとまずいのかが分かったのが大きい点です。

高橋:一言で言うと、モヤが晴れました。昔からどこかで「サービスはちゃんと使ってもらわないとおかしいよね?」と思っていたんですが、以前はそれが言えなかった。ギルドワークスさんと話をしたり、関わっていただいて「正しくないものをリリースして、使われないのはやっぱりおかしい」ということが自分として理解できたし、環境の変化もあって、会社としてちゃんと使ってもらえるサービスを目指していかなければいけない、と言えるようになったこと。私の前の上司も、一緒にやってきた他のメンバーも、みんながそう感じられたことが一番大きな変化だと思っています。

![](/wp-content/uploads/2025_05/gwsite-content/news/2017/drr-conference/photo/P1170117.JPG)

## メンバーの変化

市谷:会場の方もご質問をどうぞ。

質問者①:ギルドワークスさんと関わって、アジャイルやスクラムの方法論も入って「正しいものを正しくつくる」という姿勢を取り入れたことで、開発者やメンバー関係者の方のモチベーションやエンゲージメントは、もともと低かったのがすごく上がったのか、よかったものが少し上がったのかということ教えていただけますか。

高橋:エムティーアイでは人によります。先ほど私の事例で出したSさんはすごく低かったのが、すごく高くなりました。1から10に上がったぐらいの差があります。人によっては、合わない人もいるので5から6ぐらいしか上がらなかった人もいます。ただ下がった人はいない。なぜなら今まで正しいか正しくないのか、わからないままやっていたことが、正しいか正しくないかが分かるようになった。それ自体に関してはみんな良いと思ってくれているので低くなった人はいない。ただ上がり幅は人によります。

鈴木:うちは上がった人、下がった人がいて入れ替わりましたね。まだ40名の会社で導入したら全社員がそうなるんで、昔からいる中途組で以前の開発のやり方をすすめていた人たちにとっては違ったやり方になる。新卒や若手は真っ白なのでそれを正として覚える。会社としてもアジャイルやスクラムを推進したので、結局最後には入れ替わるようになりましたね。

梶原:チームビルディングの方針として「自己組織化したい」というのが私たちの目標です。ギルドワークスさんに入ってもらっているのは、その目的のための手段なので、目標に対して上がったが下がったかで言えば、上がっていると言えます。自己組織化すると、自分たちでやれる範囲がどんどん広がってくるので、任せられる。そうすると「やらされている」ではなく「やっている」に変わるので、チームとしては「仕事をやっていて楽しい」という気持ちが増えてきたと思っています。そういう方向に持っていくために、伴走して頂いている、という関係性だと考えています。

質問者①:もうひとつ。実質、社員の方が辞められて失ったものも多かったと思いますが、それでもやってよかったと言えるのか、そのあたりを教えていただければと思います。

鈴木:結論、やって良かったと思っております。それはずっと課題であった企画者と開発者の溝の問題、つまりエンジニアは「条件が曖昧だから駄目だ」と言い、企画者は「開発がすぐできないからバッファを設けないと駄目だ」と言い、エンジニアが社内受託みたいになっていたという問題は、誰がマネージャーになっても解決しなかった。そこにギルドワークスさんが入って解決して、会社としてはそれが正しい結果だと思った。それは今までのやり方とは違うので、窮屈だとか、ここで続けるのは無理だと感じるならズルズル続けるよりは、自分に合う場を選び直してもいい。特に40名なんて会社はすぐに文化はガラッと変わりますから、早期にお互いに明確にした方が良いという意味でよかったと思っています

質問者①:アウトされた方も、新しい会社の形に合わないということが分かって出た、トップと合わない中でいるよりは、たぶんおそらくそれはそれで幸せになっているだろう、という理解でよろしいでしょうか?

鈴木:そうですね。正確に言うとギルドさんが入ってポンと辞めたのではなく、ギルドさんが入って、今まで主流じゃなかった流れが正だとなってくると、少しずつ自分たちのやり方では出来なくなった、その変化の中で「じゃあ違うかな」という感じですね。

質問者①:ありがとうございました。

![](/wp-content/uploads/2025_05/gwsite-content/news/2017/drr-conference/photo/P1170128.JPG)

## 「正しく検証する」を守るために

質問者②:色々聞かせて頂いてためになりました。「正しいものを正しくつくる」ためには、検証のウェイトが非常に高いと理解しています。正しく検証するには、先ほどの事例のように「声のでかい人、上の圧力によって検証がずれるじゃないか」という懸念があるんですが、正しく検証していくために現場を守るバリアというか対策にはどういったものがあるのか、実際のケースはどうだったのか、聞かせていただければと思います。

高橋:正しく検証するためにどういう障壁があったか、ですが、検証チームをどう守るか、という意味で言うと、もう直接守ってあげるしかないですね。放置しちゃうと潰されちゃうことは多いので。
潰されないための方法は、僕は大きく2つあると思っていて、ひとつは目を離さないこと。自分がちゃんと理解をして、実際は任せているんだけれど、ちゃんと成果物を確認する。例えば偉い人に聞かれたとき、自分が「何かやってるみたいですけど、よくわかんないですね」と言ったとしたら、やる意味が伝わらずに「やらない方がいいんじゃん」と言われてしまうので、自分がちゃんと答えられるようにする。
もうひとつが、みんなを巻き込んでちゃんと共有をすること。他の開発者、デザイナー、POなどメンバーに「この方向で行くよ」と共有をして、みんなが「この方向でいいよね」と納得していないと、結局後々反論が来るんです。開発が終わった後で「これは私はいいと思っていなかったんだけど」となると、正しいものだったとしても、うまく推進できないので、必ずみんなが納得した上で進めるようにしています。
毎週火曜日に定例会をやっているんですが、そこで川瀬さんとKさんが一生懸命やった内容を必ずフィードバックしてもらって、意見をもらい、次の検証に活かすようにしています。

川瀬:声が大きい人達ってマネジメントクラスの人だけじゃないんですよ。作る側の人たちのなかにもいる。それは潰したくてうるさく言うんじゃなくて「ちゃんとしたものを作りたい」とか「値打ちあるものを作りたい」と思って言ってこられる。それにきちんと説明する責任が僕らにはある。
仮説検証をしてお客さんに価値を届けることと同じくらい、ステークホルダーに価値を届けることも大事だと考えています。単純に頭で組み立てて企画を考えているのと違って、検証した結果としてファクトはあるので、POに「ここは作ってもらうのは大変だけど、お客さんすごく喜んでもらえます」とか、逆に「ここは作ってももったいないことになりそう」とか、そういった情報を正直ベースで話す、ということは結構やっていました。
新たな動きが起こるので、やっぱり周りの人達も戸惑いは大きいわけですよね。会社全体の大きな流れに抗えないことも結構あって、そこに沿わせるために、マネージャーの人と一緒に「こういう作戦で行きましょうか」と週次月次でやっている状態ですね…(高橋様に)本当にいつもありがとうございます。

## ギルドワークスの「ここがちょっと…」

市谷:最後はちょっと辛口のご意見をいただければと思います。
我々は「正しいものを正しくつくる」を背負って乗り込んでいるので、色々と無茶を言うこともあります。なので皆様方は我々に対して内心「ここはちょっと…」と思うことがあるのではないかと。そこで、それを言っていただこうと思っています。

高橋:僕からでいいですか? えーと、もっと無茶言って頂いて結構です。今日、他の現場ではよく喧嘩しているって聞いたんですが「うちは喧嘩してないなー」と思って。なので、もうちょっと無茶言っていただいて大丈夫です。というぐらいですかね。

川瀬:はい。これから無茶言います。

鈴木:中村さんには全然何もないです。
市谷さんは(笑)市谷さんはお忙しいので、まめにすりあわせないと温度感が下がってくる。対クライアントという感じではないので、「この温度感ないな」と思ったらフェードアウトしそうになり、こっちが中途半端な気持ちだと自然消滅するみたいな。気をつけてほしいと言うか、市谷さんにお願いをするときは、こちらもかなり情熱を持っていないと、すぐに中途半端になると思います。

市谷:まさに私がフェードアウトしそうになっていた時に、鈴木さんが「どうしても話をしよう」と急に夜の10時ぐらいにわざわざ来ていただいて、それから2時間ぐらい話をしたことがありました。私が温度感に敏感なのは、鈴木さんのおっしゃる通りだと思います(会場:笑)
逆にいうと、相手の方に「こういうことを成し遂げたい」という情熱がある限り、それに絶対に応えよう!という思い入れを持ってあたっています。

梶原:ここ(中村)と、ここの心理的安全性は担保されていると思うので、僕はないですね。毎週ご飯食べに行って話をしているので、ね?

中村:ですね。えーと…たまに梶原さんが日和る時があるんですね。ミーティング中に「これは私よりも梶原さんが言う方が良いのにな…」と思いながら、仕方なく言うときがあります。

梶原:あ、ほんと? それ、気付いてへん(笑)

中村:じゃあ、今度からちゃんと言うようにします(笑)。
でも非常に面白くと言うか、心理的安全性は確かにありますよね。普通に「これやってください」とか「これやめて下さい」とか「次はこんな作戦で行きましょう」と相談しているので、大丈夫です。

梶原:大丈夫ですね。これからもよろしくお願いします。

![](/wp-content/uploads/2025_05/gwsite-content/news/2017/drr-conference/photo/P1170116.JPG)

## お客様と力を合わせて「正しいものを正しくつくる」

市谷:ありがとうございます。
**何か成し遂げたいということで活動しているわけですが、ギルドワークスだけで成し遂げられるわけではなくて、お客様も自分たちだけでやっていて行くのはなかなか難しい。
「正しいものを正しくつくる」とは、どちらかが頑張ってやっていくのではなくて、そこにいる関係者が力を合わせてやっていくしかないんじゃないかと思っています。
梶原さん、高橋さん、鈴木さん、本日はお忙しいところありがとうございました。**